小学生の情操教育に貢献 石巻でプロによる「アウトリーチ演奏会」
オーケストラのバイオリン奏者とピアニストが石巻市の小学校でクラシックを奏でる「アウトリーチ演奏会」が情操教育に貢献している。東日本大震災後、石巻で復興支援活動を続ける林田順平商店(堺市)が企画・協賛し、これまでに計8校で実施。子どもたちはプロの演奏を聴くことで、音楽の素晴らしさを実感し、感動の時間を共有している。アウトリーチ活動によって豊かな心を育み、芸術的な感性も磨かれていく。
同社はアウトリーチ活動について「早くからプロの演奏に触れることで、石巻で音楽を志す子どもたちを育成し、将来、音楽があふれるまちを目指す活動」と位置付ける。
本年度、稲井小と万石浦小(昨年6月)を皮切りにスタート。渡波小(7月)、和渕小、石巻小、大街道小(いずれも11月)で開催し、今年は1月20日に湊小と開北小で実施した。
バイオリン奏者は関西フィルハーモニー管弦楽団の斉藤清さん=石巻観光大使=。ピアニストは東松島市出身の杉元太さん。和渕小から田代雅美さん=石巻市須江=に変わり、バイオリンとピアノによる協演で演奏会を開いている。
石巻小の川田知宏校長は「本物の演奏をじかに耳で体感することで、音楽が心に訴えかけてくるものは違ってくる。アウトリーチ活動は子どもの情操を養う」と効果を説く。
湊小では、5、6年生42人を前に、エルガーの「愛の挨拶(あいさつ)」やベートーベンの「ロマンス第2番ヘ長調」、チャイコフスキーの「アンダンテカンタービレ」など6曲を披露した。
斉藤さんは「チャイコフスキーは結婚もできず恋人もいない孤独な一生を送った。幸せな家族に憧れて書いた」などと、作曲家の人生に触れながら曲の紹介をした。
クラシックの名曲は想像力を刺激し、心象風景が広がる。久保田健一校長は「本物を聴いてクラシックに興味を持ち、将来、音楽の道を志すきっかけにもなれば」と話した。
子どもたちは感覚を研ぎ澄まして聴き入り、至福の時間を過ごした。6年の三輪心菜さん(12)は「音の強弱が付いていて、すごく心に響くいい音色で感動した。もっと音楽を学びたい」と意欲を口にした。
今後は市内の小学校の他、中学校でも計画されており、ハープとクラリネットによる協演もある。バイオリンは関西フィルの野口まつのさん、ピアノはソリストの森本美帆さんが演奏する。
クラシック音楽は時代や世代を超えて共感を呼ぶ。本物を見て、聴いて、体感することは子どもたちの成長にとって大きなプラスとなる。林田順平商店の担当者は「今後も継続的に協賛し、子どもたちの心や芸術面の発育の一翼を担えればという思いで活動していく」と話している。
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