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震災題材の自主映画、全国に広がり 石巻出身・佐藤そのみさん監督の作品2本

全国各地で上映会が予定されている「春をかさねて」のワンシーン(c)佐藤そのみ
各地に上映会の動きが広がっている佐藤さんの映画。地元、大川地区で上映した時は多くの市民が詰めかけた=2022年12月11日、大川コミュニティセンター

 石巻市大川地区出身の会社員佐藤そのみさん(26)=東京都=が日大芸術学部映画学科時代に、東日本大震災での体験を基に制作・監督した自主映画2本「春をかさねて」「あなたの瞳に話せたら」の上映会運動が、26日の長野県上田市を皮切りに全国各地に広がっている。震災から12年がたとうとしている今、大川中2年の時に津波で大川小6年だった妹を亡くした佐藤さん自身の葛藤が刻まれた映画が関心を呼んでいる。

 上映会は26日の上田市に続いて、3月12日は岐阜県高山市、18日は東京都内、19日と26日は仙台市内、4月8日は東京の専修大と相次いで行われる。東京都練馬区の江古田映画祭での上映(28日、3月2、10日)も決まっている。

 上田市と高山市は震災後、被災地・石巻との交流を深めてきた都市。

 上田市で上映会を手がけるのは、教員らでつくる上田有志の会。久保田賢一会長(71)は「私は小学校の教員だった。震災時、中学生だった佐藤さんの思いを、映画を通して上田市の子どもたちに伝えることができたなら」と話す。有志の一人、渡辺美佐子さん(78)は「5年前、津波で被災した大川小を訪ねた。自然災害は普段の生活と常に背中合わせ。風化させてはいけない。多くの上田市民に見てほしい」と強調した。

 高山市では、防災の啓発に力を入れるNPO法人すえひろが主催。活動の中心になっている野中常雄さん(54)は「昨年12月、大川地区での上映会に足を運んだ時、高山でも上映したいと思った。外部の人が作った震災映画とは違い、妹を亡くした佐藤さんの視点から撮られている点が貴重」と指摘する。

 専修大での上映会は震災をさまざまな視点から見つめ直し、いかに災害と対応し生きていくかを考えるのが狙いで、学生以外に都民も鑑賞できる。

 いずれの上映会も佐藤さんのトークが予定されている。佐藤さんは「地元と自分自身のために作った映画が、こうして各地で上映の機会をいただけて本当にありがたい。一人でも多くの人に『見に来て良かったな』と感じてもらえたなら幸せ」と話す。

■劇映画「春をかさねて」(2019年、45分) 
 震災直後の大川地区を舞台にしたフィクション。震災で妹を亡くした14歳の少女の内面を見つめた作品で、佐藤さん自身の体験が重ねられている。キャストやエキストラには石巻市の俳優や大川地区の住民が多数、出演している。

■ドキュメンタリー映画「あなたの瞳に話せたら」(19年、29分) 
 児童・教職員84人が犠牲になった大川小にまつわるドキュメンタリー。震災から8年半が過ぎた19年12月に撮影。友人や家族を亡くした当時の子どもたちがあれから何を感じ、どのように生きてきたかを、それぞれが故人に宛てた手紙を織り交ぜながら震災と向き合う。佐藤さん自身、妹に宛てた手紙を読む。

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