寄稿>「いのちのかたりつぎ」に出演して 俳優・大橋奈央さん(石巻)
自然災害を題材にした五つの話から成る舞台「いのちのかたりつぎ」のワークショップは参加者の多くが東日本大震災後に生まれた子どもたちでした。そこで「震災って何?」「どうして悲しいの?」という子どもたちの素直な疑問を何度か耳にしました。
つらい、苦しい、怖いことがあったということを、ただ感情的に伝えるのではなく、ワークショップを経た子どもたちが舞台の上で演じながら、自ら学んでいく体験がいかに大切であるかを改めて感じました。
演じることを楽しみながら、震災を学ぶことによって少しずつ興味、関心が湧き、そこからさらに自分で調べたりすることが、子どもたちにとって身に付く方法なのかなと思いました。
そこで感じた思いを周りの大人と話せる「共通の話題」となったらうれしいです。私が俳優として取り組んでいる「伝承演劇」にもつながり、子どもたちの知識となって未来につながっていくと信じています。
「いのちのかたりつぎ」は4回目の出演でしたが、毎回新鮮な気持ちでやらせていただいています。さまざまな震災関連の芝居をさせていただいていますが、この作品は私の中で他の作品とは少し違うところに位置づけられています。
演じながら常に体の中がふんわりと温かくなるような優しさに満ちていて、これは他の作品からはあまり感じない感覚だからです。それはきっと、この作品に「忘れることのできない苦しみやつらさ、痛みの全てを、優しさや温かさで包み込むプラスのエネルギー」みたいなものが存在しているからだろうと考えています。
この作品を通して、それらを皆で共有し、命や記憶に寄り添う時間を今後もつくっていきたい。
私自身、まだまだ勉強不足です。演目の一つ「Fukushima Voice」は福島県で発生した原発の被害を描いていますが、俳優として伝える立場でいる限り、自ら体感し、新たな景色に触れながら、そこにあふれた感情や起きている事実を、お客さまに伝えられるように、これからも震災や被災した人たちに、丁寧に向き合っていきたいと思っています。
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「いのちのかたりつぎ」は5日に石巻市河北総合センターで上演された。東日本大震災など自然災害を題材とした舞台で、ワークショップを経て参加した子どもたちと、大橋さんら地元の俳優たちが津波の怖さや命の輝きを語り継ぐ大切さを歌やダンスを交えて表現した。三陸まちづくりART(大船渡市)が主催した。
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