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私の3.11 十三回忌に寄せて>心の復興ミュージカル出演、自営業・岡崎雅枝さん

ミュージカルの舞台に立つ岡崎さん(左)と健人さん

 震災から12年。石巻地方の今を生きる人たちの十三回忌に寄せる思いと、これからを聞いた。(及川智子)

妹家族の分も生き抜く

<忘れてないよ>

 「生きたくても生きられなかったみんなに忘れてないよという気持ちを届けたい」。東松島市矢本の自営業岡崎雅枝さん(50)は4日、東日本大震災で亡くなった妹家族や犠牲者への思いを胸に、ミュージカルの舞台に立った。

 参加したのは石巻地方の市民らが出演した「心の復興 13回忌ミュージカル 100通りのありがとう」。出演者の被災体験や亡くなった家族らへの思いがせりふとなったシーンがあり、岡崎さんは父の木村健人さん(81)と共に妹たちのことを語った。

 2歳下の妹直美さん=当時(35)=と、6~18歳の直美さんの子どもたち3人を震災で亡くした。

 あの日。年の近い子どもがいた岡崎さんと直美さんは一緒に子どもたちを学校へ迎えに行き、岡崎さんの自宅前で別れた。

 直美さんはその後、子どもたち3人と大曲浜地区の自宅にいた長女を迎えに行った際、津波にのまれたという。長男は助かったものの、直美さんを含む4人は帰らぬ人となった。

 小学生の頃に両親が離婚したこともあり、母がいない分、助け合って暮らしていた。「大人になってからも互いに子どもの面倒を見たり家事を手伝ったり。ずっと一緒だった」と岡崎さん。直美さん一家は震災の年の3月下旬、東京で新生活を始める予定だった。

 ミュージカルには知人の誘いをきっかけに、2019年の公演で初めて出演した。人の痛みが分かり裏方の仕事にも熱心な仲間たちの存在が温かく、今回も参加を決めた。

 脚本には演出や音楽も手がけた寺本建雄さん(76)が参加者に聞き取った震災体験が盛り込まれた。妹家族のことや健人さんが供養の思いを込めて制作した獅子頭のことを伝えるとせりふに採用され、健人さんを誘って舞台に臨んだ。

<父の思いを代弁>

 公演当日、岡崎さんは満員の客席を前に「娘と孫3人、一度に4人亡くした父はどう治めていいか。自分に言い聞かせます。あの4人はどこかに引っ越ししたんだ」と父の思いも代弁した。獅子頭を手に健人さんが4人の名前を呼び「じいは元気だ!」と続くと、会場は大きな拍手に包まれた。

 子育ての他にも、販売するほどの腕を持つ服やバッグ作りに励んでいた直美さんは人生を生き抜いたとも感じている。「命ある限りみんなの分も楽しく一生懸命生きるからね」。直美さんたちにそう伝えたい。

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