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私の3.11 十三回忌に寄せて>西光寺住職・樋口伸生さん

震災犠牲者の十三回忌の追悼法要に向けトウバを書く樋口さん=西光寺

 震災から12年。石巻地方の今を生きる人たちの十三回忌に寄せる思いと、これからを聞いた。(浜尾幸朗)

遺族への寄り添い模索

 亡くなった人の顔を思い浮かべながらトウバの裏にお経を書く。一人一人へ思いを込めて-。石巻市門脇町2丁目の西光寺で11日、東日本大震災から12年の追悼法要がある。檀家(だんか)の犠牲者は172人。今年は十三回忌に当たる。住職の樋口伸生さん(60)は法要に備え、日々、トウバに向かう。

<苦しみは癒えず>

 西光寺は震災後、毎年3月11日の追悼法要に加え、月命日にも法要を執り行っている。月命日には樋口さんが代表を務める遺族会「蓮(はす)の会」(10人)のメンバーや支援者ら約20人が集まり、樋口さんが作った仏の言葉が心に届くよう現代文に直したテキストを唱え、遺族同士でさまざまな思いを語り合う。

 「遺族の苦しみは癒えることはない。逆に苦しみは増してくる。配慮が必要。子どもを亡くした親は『私の人生で何でこんなことが起きるのか』と思ってしまう。成人式など一年の行事の中で亡くした家族のことを当てはめ、心の中は苦しくなる」

 2022年3月10日。西光寺と蓮の会は石巻南浜津波復興祈念公園内に震災祈念モニュメント「哀愛逢(あいあいあい)祈りの碑」を建立した。2人が寄り添う姿をかたどり、亡くした人を愛し続け、祈りをささげる遺族の気持ちを表現。「哀(かな)しみの中でも愛するあの人をいつも心に 逢(あ)えることを道しるべに」と刻んだ。

 十三回忌が近づく。「震災後、遺族は苦しみを抱え我慢して暮らしている。人生の最悪の日として思い出される3月11日。午後2時46分のサイレンで遺族は震えている。私も胸が苦しくなる。遺族や多数の被災者が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症するのでやめてほしい」

 全ての苦しみを受け止めてくれる祈りの場として市震災遺構門脇小脇の西光寺墓地内に台座を含め高さ6メートルの「いのり大佛(ぶつ)」を建立する計画を進めている。

<「支え合おう」へ>

 西光寺は震災の津波で甚大な被害を受けた。檀信徒会館は再建したが、本堂などの修復は終わっていない。樋口さんは墓地内で津波をかぶった遺骨の洗浄も12年間続けている。遺族にも体験させ、亡き人や先祖への思いを深めてもらう。

 「12年はあっという間だった。(宗教者として)一生懸命にお祈りの活動をやってきたつもりだが、遺族の苦しみが大きくて役に立っていない。日々、どうしたらいいのかを模索し、心に寄り添う方法を探している」と話す。

 最大被災地は今後も震災からの年月を重ねる。「これからは『支え合おう石巻』『いたわり合おう石巻』がいい」

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