閉じる

<311次世代塾>当事者の教訓つなぐ/第6期修了詳報

避難や救助 疑似体験も

受講生は災害時を疑似体験するゲームに取り組んだ=2023年1月14日、仙台市宮城野区の東北福祉大仙台駅東口キャンパス
旧防災対策庁舎前で講師の話を聞く次世代塾の受講生=2022年6月11日、南三陸町

 東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」の第6期(2022年度)は、年間15回の講座を終えた。大学生を中心に高校生、社会人計117人が修了。所属大学を通すなどして修了証を交付した。

 仙台市宮城野区の東北福祉大仙台駅東口キャンパスを主会場に、座学のほか、被災地バス視察と一部収録動画の配信を併用して講座を実施した。

 座学は5月、宮城県南三陸町の元公立志津川病院の医師、南三陸町戸倉小の元校長が津波被災の状況と避難について語った。11月は仙台市沿岸部で救助捜索活動に当たった市消防職員と名取市閖上で被災した視覚障害者、12月は子どもの学習支援に取り組んだNPO代表と、震災遺児のグリーフケアを続ける東松島市の実践者がそれぞれ講話した。

 1月の第15回講座は、仙台市職員有志らによる震災体験の伝承活動を学んだ。災害対応を疑似体験するゲーム「クロスロード」にも挑戦。市職員の避難所運営などの実体験を踏まえた設問についてグループワークを行い、意見交換した。

 視察は人数をバス定員の半数にして4カ所を訪問。6月は南三陸町の旧防災対策庁舎、7月は気仙沼市の東日本大震災遺構・伝承館、9月は石巻市の震災遺構大川小、10月は仙台市の震災遺構荒浜小と名取市閖上を見学し、語り部らに被災体験と復興状況を聞いた。

 第6期は宮城県内の9大学の学生ら148人が登録した。第7期(23年度)は5月開講予定。募集要項と講座内容は後日、発表する。

 次世代塾は「311次世代塾推進協議会」が運営。構成団体は河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。

<修了生の声>
■次は私が守る番
 災害に絶対大丈夫はないと学びました。小学生のころ石巻市雄勝で津波に遭い、先生の判断で裏山に逃げて助かりました。4月に中学の教員になります。次は私が生徒や住民を守る番です。どこにいても自分の身を守り、震災が風化しないように伝え続けたい。(石巻市・宮城学院女子大4年・佐藤愛美さん・22歳)

■支援活動続ける
 次世代塾の学びは、大学で参加する被災者支援の活動に役立ちます。今も恐怖や不安感、孤独感を抱える被災者は少なくありません。気持ちに寄り添い、支援側の安全・安心も大事にしながら活動を続けたい。被災地へ足を運び、住民の思いも発信していきます。(仙台市泉区・尚絅学院大2年・千葉壮馬さん・20歳)

■自分も語り継ぐ
 被災地の現状と当事者の思いを知り、自分も語り継がなければいけないと思うようになりました。災害発生時を疑似体験するクロスロードは、実際に避難所対応をするときに役立つと実感しました。次の災害で犠牲者を出さないよう学び、伝え、行動したい。(仙台市青葉区・東北福祉大1年・吉成美宥さん・19歳)

■地域にも対策を
 地域には子どもや高齢者、障害者らいろいろな人がいます。災害時は自分や家族だけでなく、地域全体を守る対策も必要です。被災地では、復興がまだ終わっていません。経験を次世代に伝えることを自分の課題とし、学んだことを今後に生かしたいと思います。(大崎市・東北学院大3年・伊藤一真さん・21歳)

■感情知り身近に
 医療や学校避難などさまざまな側面から震災を学びました。被災者の怒りや悲しみを知り、起きた事をより身近に感じました。公務員を目指しています。将来は伝える側として自分と誰かの命を守れるようになりたい。被災地を訪れるなどして学び続けます。(宮城県大郷町・宮城大3年・小野雅斗さん・21歳)

■守る責任再認識
 旧大川小視察で以前はそこに子どもの笑顔と日常があったと強く感じました。教師は子どもの命を守る責任ある仕事だと実感し、教職に進む覚悟を再認識しました。命を守るには知識を行動に移すことが大切です。学びを今後に生かしたいと思います。(仙台市青葉区・宮城教育大1年・本田彩子さん・19歳)

■常に備え見直す
 阪神大震災を兵庫県芦屋市で体験した母の年齢に近づき、災害に遭ったらどうするか考えようと受講しました。講師の「生きていないと何もできない」の言葉通り、自分の命を守ることが重要。想定外はあり得ること、常に備えを見直すことが大切と学びました。(仙台市青葉区・東北大2年・橋本奈緒さん・20歳)

■学び勇気もらう
 震災当時小学2年生で、岩手県沿岸で津波被災しました。ずっと話せずにいましたが、講師陣に感銘を受け、経験を自分の言葉で伝える大切さを学ぶとともに勇気をもらいました。誰かの命を助けることにつながるなら自分も経験を話し、震災伝承に役立ちたい。(仙台市太白区・東北工大2年・白間心さん・20歳)

関連リンク

関連タグ

最新写真特集