(541)飲み干せば空き缶うすし春の暮/嶌田岳人(1963年~)
仕事を終えての一杯、または花見酒だろうか。缶ビールや缶チューハイを飲み干し、手で軽くつぶす。その感触が手に残る。どの季節でも缶の薄さは変わらないのだが、作者にはその時ことさら薄く感じられた。人は、指と指の間に挟むことなく、外側からの触覚だけで物質の厚みをなんとなく測ることができる。陽気な春の日が暮…
関連リンク
- ・(540)陽炎より手が出て握り飯掴む/高野ムツオ(1947年~)
- ・(539)茎立や寝ぐせの髪を直されて/増子香音(1992年~)
- ・(538)庭に出でゝ物種蒔(ま)くや病上り/正岡子規(1867~1902年)
- ・(537)春月や書物崩るる中に棲む/鍵和田秞子(1932~2020年)
- ・(536)ここから逃げたくて風船を離す/雪消ミスミ(2005年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。