いしのまき食探見>養殖ギンザケ とろける味わい、七変化
海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。
養殖ギンザケ
宮城県が生産量日本一で発祥の地とされる養殖ギンザケ。身にツヤと張りがあり、とろけるような食感が特長だ。刺し身はもちろん、塩焼き、バター焼き、燻製など調理の仕方もさまざまで、世代を超えて愛される魚の代表といえるだろう。
東日本大震災後、東京電力福島第1原発事故の風評被害などで価格が低迷した時期もあったが、近年はウクライナ情勢による海外産の輸入減少もあり、上昇傾向になっている。
石巻、女川両魚市場でも入荷が増えている。昨年、女川は水揚げ後に生け締め処理した高鮮度の「みやぎサーモン」の扱いが5881トンで県内一だった。石巻も身に脂が乗り、氷締めした「金華ぎん」が他の魚種を抑えてトップになった。
今季は海水温が高く、生育が順調。例年より早く入荷が始まった。生産者のグルメイト(女川町飯子浜)の阿部郁也専務は「脂乗りや色が良く、春本番になればさらに大きいものを届けられる」と意欲を見せる。
ギンザケの新たな食べ方を提案する飲食店も生まれた。昨年12月に女川町の地元市場ハマテラス内にオープンしたハンバーガーショップ「女川バーガー」は、ハーブ入りの餌を使った臭みがなく濃厚な味のサーモンをフライにし、ハンバーガーとして提供する。
時代の変化もあり、国産へのニーズはさらに増えそうだ。新たな活用も広がり、石巻地方の水産物の新たな顔になってきているのかもしれない。
(大谷佳祐)
<メモ>
ギンザケは成長が早く、耐病性があることから養殖に適した魚種といわれ、1970年代に県内で養殖が始まった。太平洋岸に面した石巻市、女川町、南三陸町の海域が主な養殖場で、県内のギンザケ養殖は国内シェアの8割以上を占める。
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