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退職校長、思いを語る 石巻地方(下) 石巻小、蛇田中

石巻小・川田知宏さん
蛇田中・小野寺周哉さん

 3月末、石巻地方の小中学校4校の校長が定年退職した。長年にわたる教員生活を振り返り、学校づくりや教育に対する思い、今後の期待などを聞いた。

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石巻小 川田知宏さん

<人育てる仕事でき幸せ>

 「人としてどうあるべきか、どう生きるか。その延長線上に教員がある。教える立場なのに、子どもたちから教えられることがいっぱいあった」。37年の教員人生を振り返り、しみじみ語る。

 「子どもは純粋だから一生懸命になる。その姿から毎日エネルギーをもらっていた。教員の仕事のいいところ」

 仙台市出身。宮城教育大卒。矢本町赤井小南赤井分校を振り出しに仙台市岡田小、上海日本人学校などに勤務し、石巻市中津山一小校長、同市教委学校教育課長などを務めた。

 市教委指導主事だった2014年度、日本版の包括的生徒指導プログラム「マルチレベルアプローチ(MLA)」の事業に携わり、子どもの学びに向かう力を養った。

 学校教育課長は19年度の1年間。「1万人の児童生徒と1000人の教職員の命を守り、市全体の教育を進める重責に毎日、身が引き締まる思いだったが、やりがいはあった」

 集大成の石巻小ではコロナ下、教職員の知恵を結集し生きる力や思考力を高める取り組みを展開。読書を推進し、本を読んだらタブレット端末を使って感想や紹介文を書く活動を取り入れ、学力向上につながる成果を上げた。

 「人を育てるという世界一尊い仕事を続けてやれたことは幸せ。新たな場所(シンガポール日本語補習授業校)で仕事をするが、帰ってきたら石巻地方のためになることをしたい」と前を向く。

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蛇田中 小野寺周哉さん

<自ら考え行動する人に>

 「あっという間の37年。いろいろな経験をさせてもらい、教育行政では視野を広げることができた。恵まれた教員人生だった」

 石巻市出身。東北学院大卒。教諭として石巻中、女川一中など4校に勤め、松島中教頭、南三陸教育事務所次長、大和中校長、県総合教育センター副参事班長などを務めた。

 「初任(旧河南町前谷地中)の時はできないことだらけ。卓球部の顧問だったが、ルールが分からず生徒に教えられた」という。

 熱血教諭は、生徒と一緒に練習したり、ランニングしたりして卓球が好きになり、のめり込んだ。その結果、その後に赴任した河南西中、石巻中を県大会出場の常連校に育てた。

 河南西中では、桃生郡中体連の陸上競技総合で5連覇も達成した。「練習計画を作り、生徒の練習の割り振りをした」

 松島中教頭時代に東日本大震災に遭遇。「津波は来なかったが、学校再開後も地域とのつながりがあったので、いろいろな面で助けられた。『学校は地域に浮かぶ船』であることを実感した」

 蛇田中では新型コロナウイルス下で活動が制限された。「卒業式で『工夫次第でコロナを乗り越えることを体験できた』と述べた卒業生の答辞が非常にうれしかった」と笑顔で語る。

 「中学生の3年間は心身ともに大きく成長する。その瞬間に立ち会えることは、教師の喜びであり、支えてほしい。生徒は自分の頭で考え、行動する人になってほしい」と願う。

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