退職校長、思いを語る 石巻地方(上) 蛇田小、大曲小
3月末、石巻地方の小中学校4校の校長が定年退職した。長年にわたる教員生活を振り返り、学校づくりや教育に対する思い、今後の期待などを聞いた。
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蛇田小 阿部淳さん
<弱い立場の子の味方に>
「教員になり、子どもたちや先輩の教員に出会う中で、人を育てる教育の素晴らしさに気付いた。若い頃は『育てる』という意識が強かったが、続けていくうちに、心に寄り添い励ましながら『育ちを支える』ことこそ、教師の未来の役割と思うようになった」
37年の道半ばの教員人生に思いをはせ、後進には「子どもの目線に立ち、そばにいて一緒に歩みながら励まし支えていく教員であってほしい」と願う。
石巻市出身。宮城教育大大学院卒。仙台市向山小を振り出しに石巻市湊二小、県大河原教育事務所指導主事、荻浜小教頭などを務め、2016年から4年間、塩釜三小校長に就いた。
教諭時代、4校目の吉浜小では「一人一人の実態をよく見て指導が必要な子と正面から向き合い、指導を工夫し成長を子どもと共に喜び合った」と振り返る。
「教師は弱い立場の子の味方にならなければならない」。学校現場では、ハンディキャップのある子の支援に心を砕いた。
初任校長の塩釜三小では「担任の立場に立って学校経営を考えた。担任が笑顔で働きやすい職場をつくれば、子どもへの良い指導につながる。業務の効率化を中心に働き方改革に取り組んだ」と語る。
20年から3年間が集大成の蛇田小。コロナの影響で活動が制約されたが「学校行事の本質を原点に返って再確認できた」という。
子どもたちは無限の可能性を持つ。「一度の人生、思うように生きて。世界を舞台に活躍してほしい」
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大曲小 遠藤公司さん
<一歩踏み出して挑戦を>
37年の教員生活を振り返り、「行く先々でいい出会いがあった。自分の未熟さに気付かされ、学ばせてもらった。優しさの本質を考えながら子どもに向き合うことができた」という。
20代後半、石巻市の小学校で5年生の担任をしていた時のエピソードを紹介。遠足は運動着でなく私服に変更したが、当日、運動着で登校した女の子が泣いていたため、朝の打ち合わせ後に対応しようと職員室からクラスに戻ったところ、隣の女子が運動着に着替えていた。
「その子はにっこり笑って『先生、私はこれでいいの』。泣いていた子は泣きやんだ。情けなかった。子どもに教えられ、助けられた。本当の優しさ、思いやりを示してくれた」
女川町出身。宮城教育大卒。初任の女川四小など石巻地方の小学校6校に勤務し、涌谷一小、多賀城市山王小で教頭を務めた。2020年から3年間、大曲小の学校経営に当たった。
「子どもたち、学校のために尽力したコミュニティ・スクールの構成員に一番感謝している。学習や植栽活動の支援、校地の環境整備などで支えてもらった」
「普通の子が『学校っていいなぁ』と思ってもらえるよう、『出番』を与え『役割』を持たせ、頑張る姿を『承認』する学校づくりを心がけてきた」
後進には「子どもの思いに気付き、寄り添える教員でいてほしい」と語る。子どもたちには「可能性を生かす機会に一歩踏み出し、チャレンジしてほしい」と期待する。
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