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わいどローカル編集局>赤井(東松島市)

牡鹿柵を裏付ける塀跡と溝跡などが見つかった赤井官衙遺跡                 =2017年12月16日

 石巻地方の特定地域のニュースを集中発信する「わいどローカル編集局」を開設します。5回目は「東松島市赤井地区」です。

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遺跡や数々の逸話残る

 東松島市の赤井地区には1日現在、3378世帯7895人が暮らす。「北赤井」と呼ばれる地区北部は田畑が広がる。地区南部にはJR仙石線が走り、陸前赤井駅を中心に住宅地が形成されている。

 県市町村振興協会によると、「赤井村」は1889年の市制・町村制施行前に既にあった。村は東大医学部の前身となる西洋医学所で初代頭取を務めた医師、大槻俊斎を輩出した。

 89年に北村、須江村などと合併し深谷村になり、96年に赤井村として再び分村。昭和の大合併で1955年、矢本町、大塩村と合併し、矢本町になった。

 地区にはさまざまな歴史や逸話がある。地区を沿うように流れる定川には、奥州藤原氏の藤原秀衡に仕えた照井太郎に会うため、その妻が鍋で川を渡ったという逸話「鍋越の松」が伝わる。

 「矢本町史」によると、村名の由来は1778年の風土記に記してあり、赤い水が沸くことから名付けられたとされる。風土記にはさらに「傷口に赤井の水をかけたところたちまち治った」とある。地区の歴史に詳しい北赤井の上区自治会長山崎恵章さん(67)によれば、これは赤井舘前にある赤井八幡神社での出来事だという。

 赤井星場に位置する赤井官衙(かんが)遺跡は1986年、発掘調査が始まった。石巻地方を統括した古代牡鹿郡の役所「牡鹿柵」か、地元有力者の統括拠点「牡鹿郡家」跡と推測されている。

 遺跡は市内の矢本横穴とともに赤井官衙遺跡群として2021年、国の史跡に指定された。歴史の解明につながる重要な文化財だが、遺跡は地域の生活に当たり前のように存在していた。山崎さんは「畑を掘れば土器の破片や、時にはつぼがそのままの形で出てきたこともある」と話した。

オール赤井まつり、30年続く一大行事

1994年2月27日に開かれた第2回オール赤井まつり              (赤井市民センター提供)

 赤井市民センターで毎秋開かれる「オール赤井まつり」は、地域の一大行事として約30年続く。今年は9月3日に開催予定。新型コロナウイルスの影響で4年ぶりとなる。

 各地域にはそれぞれの祭りがあるが、赤井地区全体の親睦を深めようと始まった。前身は1990、91年に開かれた「あかい公民館まつり」。92年に現在の名称になってからは、今年で29回目を数える。

 大型トラックの荷台を活用した舞台に、小学生の和太鼓や中学生の吹奏楽をはじめ、カラオケ大会や踊りの披露など芸達者な住民たちのステージが繰り広げられる。日が暮れると約230発の打ち上げ花火でフィナーレを迎える。

 例年3000人ほどが地区内外から訪れるが、新型コロナの流行で2020~22の3年間は開催を見送った。代わりに花火の打ち上げのみを実施したり、小学生による和太鼓演奏の映像などを動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開したりと、代替事業に工夫を凝らした。昨年は「スモォール赤井まつり」として、文字通り規模を縮小しつつ子ども広場やキッチンカーで来場者を迎えた。

 実行委員会は地区内の全10自治会などから委員を募り、受け付けやステージ運営、会場の設営、美化といった担当を配置する。今年は若い世代や地区外の住民にも参加してもらおうと、一般からも募集した。

 斎藤英彦実行委員長(59)は「伝統を大切にしながら新しいアイデアを取り入れ、若い世代にもより地域に携わってもらうきっかけにしたい」と語る。

99歳の画家・相沢実さん、継続の大切さを実践

力作を手に笑顔を見せる相沢さん

 「絵の何が好きというよりも、描きたいから描くだけ」。御年99歳になる東松島市赤井在住の画家、相沢実さんはにこやかに話す。

 相沢さんは1924年、松島町の生まれ。第2次世界大戦中は軍需工場での労働に従事し、戦後は旋盤工として働いた。

 絵画の世界に出合ったのは小学校の授業。自分の絵が、上手な作品として教室に張り出された。以来、美術にほれ込み、20代の頃には日本画家の故小倉遊亀氏に師事した。「先生にはいろんな角度から物を見る大切さを教わった」。小倉氏から送られた手紙は今でも大切に保管している。

 絵描きとしての最盛期は60~80代の頃。自宅にある人形や花などをモチーフに日本画や水彩画に取り組んだ。描きためたスケッチを基に、物の配置や比率を設計し、タッチや配色などを綿密に決めて制作を始める。構想から完成まで1年はかけたという。

 子どもの頃から夢中で描き続けてきた相沢さんは「絵でもギターでも、途中でやめないで飽きずにやり続けること」と、継続の大切さを強調する。長年連れ添ってきた妻のやすこさん(93)には「売れない画家で迷惑をかけた」と苦笑いした。

 最近は高齢のため根気の要る作業ができず、代わりに独学でピアノを楽しんでいる。「夕焼小焼」や耳で覚えたアメリカ国歌の主旋律を片手で弾く。相沢さんは「『ピアノを弾こう』とか『雑草を取らなきゃ』といった思いが生きる気力につながる長寿の秘訣(ひけつ)だ」と語った。

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 今回は赤井販売所と連携し、及川智子、西舘国絵の両記者が担当しました。次回は「石巻市雄勝」です。

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