宮城の公立高、食堂や売店の撤退相次ぐ 生徒は食べ盛り「温かいご飯物食べたい」
「宮城県の公立高で食堂や売店の撤退が相次いでいる」。県内の高校関係者から「読者とともに 特別報道室」に窮状を訴える声が届いた。新型コロナウイルスの感染拡大による臨時休校などで、運営企業の収益が悪化したことが主な原因という。食べ盛りの生徒を満足させたい学校側は、新規業者の参入を望む。
学校側「子ども支えるため新規参入を」訴え
「おばちゃん、このパンをちょうだい」「私はポテトチップスね」
松島高(松島町)で午前中の授業が終わった4月20日正午過ぎ、町内に住む大山ひろ子さん(79)が切り盛りする売店に生徒たちが詰めかけた。購入者の列は途切れず、食品の在庫は瞬く間に減っていった。
松島高には食堂がない。2022年3月まで近隣の業者が請け負っていたが、コロナ禍で営業日が減るなどして売り上げが落ち込み、撤退を余儀なくされた。学校は大山さんにおにぎりの追加販売を依頼してしのいできたが、生徒たちには不満が募る。
3年斎藤玲(あきら)さん(17)は「おにぎりは数が少なく、午前中の授業が終わったら教室を飛び出さないとなくなる。そもそも、男子高校生はパンとおにぎりでは足らない」と力説。同級生の志田響生(ひびき)さん(18)も「温かいご飯物が食べたい」と食堂の復活を切望する。
再開のめどは立たず、頼みの綱は売店だけだが、大山さんも視力が衰えて発注作業がしんどくなり、引退を考えている。「車で送迎を担う夫も高齢。後継者もいないので責任を感じるが、いつまで続けられるか…」と表情を曇らせた。
県教委によると21年度、県立高69校のうち27校に食堂がなく、売店がない学校も13校に上る。コロナ禍だけでなく、少子化を背景に高校の食堂や売店の経営環境は厳しさを増しているとされる。
多賀城高(多賀城市)でも3月、売店の業者が撤退した。食堂も数年前に営業をやめ、生徒はパンなどの自動販売機に頼る。他学校でも、閉店の意向を示唆する業者がいるという。
松島高の佐藤康弘事務室長は、食品を扱う障害者の就労支援施設などを念頭に「子どもたちを支えるため、新規業者に参入してもらいたい」と呼びかける。(桜田賢一)
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