「宮城一高奨学会」の潤沢資金5億円 戦前からの学校林売却で
宮城一高(仙台市青葉区)生への奨学金給付などを担う一般財団法人「宮城一高奨学会」の解散問題は、少なくとも2023年度内は解散しない方向で決着した。かつて学校の施設整備に数億円を拠出した潤沢な資金力の源泉をたどると、戦前から続く「学校林」に行き着いた。
[宮城一高奨学会の解散問題] 奨学会は2015年度、多目的ホール「秋桜館」のエアコン整備や生徒と教職員の机や椅子の更新・廃棄に約9000万円を寄付する計画を決め、基本財産が300万円を割った場合は解散する方針も確認した。卒業生有志が今年1月、会の存続を求める約1000筆の署名を提出。奨学会側はエアコンの見積もりなどが間に合わないため「23年度の解散はない」との見通しを示した。
戦前取得 都市化の波が後押し
前身の宮城一女高の「六十年史」によると、同校は1940年、皇紀2600年記念事業として富谷村下桜木(現富谷市)に土地約1・8ヘクタールを購入し、学校林としてスギの苗を植えた。
生徒らは遠足で学校林を訪れ、下草を刈るなどの手入れに励んだ。その結果、52年時点で立木だけでも25万円(現在の価値で約170万円)もの財産になったという。
学校名義で土地を所有することができないため、購入時は校長名義で登記。52年に財団法人「宮城一女高奨学会」を設立し、名義を奨学会に変更した。
80年代に入ると仙台市郊外の発展に伴い、学校林周辺も開発計画が浮上。同校の「百年史」には、84年ごろからゼネコンやデベロッパーと協議を重ねた経緯が記されている。学校林は土地を含めて全て処分され、跡地には現在、物流施設などが立地する。
同校関係者によると、土地売却代金は約5億円。百年史によると「将来にわたって奨学会を運営するための財産・資産として1億円を残し、その他を(学校創立)100周年記念事業に支出する」ことにした。
その取り決めに従い、奨学会は同校が創立100周年を迎えた97年、記念事業として整備された多目的ホール「秋桜館」の建設費として約4億円を支出。22年3月時点で約1億円の財産が残った。
他校にも奨学会 独立した体制づくり課題
奨学金給付や教育環境整備が目的の「奨学会」は、宮城県内の公立高校では仙台一と仙台二にもある。いずれも一般財団法人で、保護者からの寄付金などによる一定の財産がある。
仙台一の奨学会の財産は昨年3月時点で約5000万円。仙台市太白区旗立3丁目に所有する学校林4・4ヘクタール(通称一高山、簿価約1000万円)や保護者の寄付金などで構成する。
仙台二の奨学会の財産は昨年3月時点で約1億6000万円。仙台西道路の用地となった奨学会の土地の売却金などが含まれるという。
県監査委員は2017年、「奨学会事務局が高校に置かれるなど、一般財団法人なのに独立した運営がなされていない」として県教委を指導。県教委は独立運営に向けた検討を3校の奨学会に要請したが、事務職員の人件費などがネックとなって進まず、独立した体制づくりが課題となっている。
(末永智弘)
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この記事は「読者とともに 特別報道室」に寄せられた情報などを基に取材しました。
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宮城県警 みやぎセキュリティメールより
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