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春の交通安全運動きょうスタート 自転車用ヘルメット着用、努力義務に

自転車用ヘルメットが並ぶ店内=ダイシャリン石巻店

 春の交通安全県民総ぐるみ運動が11日、県内各地で一斉に始まる。歩行者の安全確保や自転車のヘルメット着用などを重点に、20日までの10日間、石巻地方でも各交通安全関係団体が運動に取り組む。

自転車用ヘルメット販売急増、入荷待ちも

 自転車利用者のヘルメット着用が、4月1日施行の改正道交法から努力義務となった。2008年から保護者に義務づける形で13歳未満に求められていたヘルメット着用が、全年齢に拡大した。罰則はない。

 昨年の石巻地方では、自転車乗車中の死傷事故が29件発生した。県全体では633件で、ヘルメット着用者はそのうち9.0%の57人。非着用の重傷・死亡者85人のうち22.4%の19人は、ヘルメットの着用でけがを軽減できたとされる。

 努力義務化を受け、石巻地方の自転車店ではヘルメットへの関心が高まっている。石巻市蛇田のダイシャリン石巻店では、高齢者を中心に購入を急ぐ客が訪れ、3月と4月の売り上げだけで昨年1年間のヘルメット販売数を超えたという。

 本田明浩店長(60)は「08年の改正では大きな反響がなく、今回もそんなに売れないのではと思っていたが、動きが全く違う」と驚く。

 ヘルメット価格の下限は6000円程度で、重さも軽量化が進み300グラム前後のものが多い。全国的な需要の高まりで生産が追い付かず、入荷待ちの商品もあるという。

 一方でヘルメット着用が地域に定着するかは今後次第だ。石巻署交通課によると、高齢者以外の世代の反応が少ないという。交通ルール一般の定着も含め、自転車利用者の安全意識向上が求められる。

この道、要注意!

 石巻地方2市1町で昨年発生した人身事故は245件。交通事故による死者数は6人と前年の3人から倍増した。悲惨な事故を防ぐため、見通しが悪い、誤認しやすいなど、運転に注意が必要な主な道路を石巻、河北両署に聞いた。

■コバルトライン(石巻市女川町)

昨年7月に死亡事故が発生したカーブ=石巻市鮎川浜黒崎

<二輪車の死亡事故発生>

 石巻市と女川町を結ぶ県道牡鹿半島公園線(コバルトライン)はつづら折りが続く山道で、景観の良さもあり全国各地からバイク愛好者が訪れる。

 カーブで速度を出し過ぎるライダーが多く、いくつもの場所で、車線や路外への逸脱、転倒事故が多く発生している。昨年7月にはオートバイ同士が正面衝突し、男性=当時(53)=1人が亡くなり、もう一方の男性=当時(33)=も大けがをした。

 石巻署は、検問や電光掲示板での注意喚起や、取り締まり強化など対策を打つが、効果は芳しくない。武内和也交通課長は「コバルトラインは公道であり、レース場のように走る場所ではない。他の車両のことを考え、安全運転をしてほしい」と話した。

■山下清水町、清水町西の両交差点(石巻市)

石巻大橋方面から見た山下清水町交差点(手前)と清水町西交差点(奥)。奥の青信号を見ていると、手前の赤信号を見落とす危険性がある

<信号近接、見落とす恐れ>

 石巻市の中里バイパスの山下清水町交差点と清水町西交差点は隣接している上、二つの信号が近距離に並び、石巻大橋方向から進入すると、手前の山下清水町側の信号を見落とす危険性がある。

 石巻署によると、近い位置に信号が並ぶことはあまりないが、ここは道路の特性上設置せざるを得ないという。さらに交通量が多く、右左折もあるため、黄色信号で慌てて加速した直進車両が対向の右折車両とぶつかる危険があるという。

 信号の連動を工夫するなど署でも対策を取っているが、事故を防ぐには、交差点を利用する自動車、歩行者双方が十分に注意することが必要だ。自動車は、信号に対応できる安全な速度で走行し、歩行者は、普段より自動車の動きに注意をするなど留意したい。

■大川小付近交差点(石巻市)

震災遺構「大川小」付近の変則交差点

<誤認多発、右折車と接触>

 石巻市の震災遺構「大川小」付近の三角地帯にある変則交差点は、右折車両と直進車両の接触や脇見運転による単独事故など物損事故が目立つ。

 雄勝方面の国道398号から進入すると、直進と右折車線の判別がつきにくい。本来右折である車線が直線車線に見えるため、ウインカーを出さずに進入する車両がある。対向車側からすると直進車だと思うためそのまま進んで接触するケースがある。通行時は減速し、対向車の有無や側方間隔を確認する必要がある。

 震災遺構の大川小には県内外から多くの人が訪れる。河北署の山下哲哉交通課長は「交通量が増えるこれからと夏休みにかけて十分に気をつけて運転してほしい」と呼びかける。

石巻署・手島俊明署長に聞く

 春の交通安全運動が始まるのに当たり、石巻署の手島俊明署長に、管内の交通情勢や警察活動について聞いた。

<安全と円滑さ両立へ>

-東日本大震災後の2012年から14年まで石巻署の交通課長だった。

 「当時は迅速な復興を求める機運が高まっていたが、『健全が大前提』と関係機関に説いて回り、がれきの搬出などでの交通ルールを徹底した。一度乱れた秩序は回復に時間がかかる。高度経済成長期に容認された過積載運行は平成初期までなくならなかった。同じ轍(てつ)は踏まないとの思いだった」

-現在の石巻の印象と今後の交通上の課題は。

 「9年ぶりの石巻は『渋滞がない』と感じた。インフラが整い、新たな道路が増えたことで車の流れも変わった。変動の中、いかに道路の安全と円滑さを両立させるかが課題だ」 
 「ハード面の整備はあくまで復興のスタート地点だと思う。地域の安全は無形のインフラで、秩序を行き届かせるのが警察の仕事。石巻の復興の基盤として、安全を維持したい」

-車社会の石巻で高齢者の免許自主返納は進むか。

 「高齢者は免許を『返さない』のではなく『返せない』。過疎地で免許を取り上げるのは暮らしに大きく関わる。生命線でもある。生活の足が確保できて初めて返納につながる。警察だけではなく自治体と協力し、運転に不安を持つ人が免許を返しやすい環境づくりを図っていきたい」

-交通安全の実現に向けて地域に望むことは。

 「ルールはマナーとは違い必ず守るもの。横断歩道での歩行者優先などを徹底し、その上で譲り合いの精神も大切にしてほしい。震災で助け合いを経験した石巻は、他の地区以上に思いやりを発揮できると期待している。運動をきっかけに、1年365日交通安全に努めてほしい」

【期間中、石巻地方の取り組み】

▽11日 
 東松島市出動式(東松島市役所) 
 女川町出動式(JR女川駅前) 
 石巻市出動式(イオンモール石巻) 
 春うらら復興わかめ作戦(石巻・道の駅上品の郷) 
 スピード抑えて優しく走ろう牡鹿半島(牡鹿消防署前) 
 横断歩道止まるっちゃ!人波作戦(鳴瀬車両検測所) 
 交通安全教室(石巻工業高)
▽12日 
 かなん絆作戦(石巻・広渕交差点) 
 ナイト作戦(石巻・元倉交差点) 
 飲酒運転根絶作戦(東松島・JR矢本駅前)
▽14日 
 蛇田街頭キャンペーン(石巻・恵み野交差点)
▽15日 
 踏切事故防止街頭キャンペーン(石巻・水押踏切) 
 ジョイントナイト作戦(石巻・パルプ五差路交差点) 
 桃生中生徒会合同自転車あいさつ運動(石巻・桃生中正門前)
▽16日 
 通学路交通監視(東松島・赤井南小、矢本二中前) 
 いしのまき絆作戦(JR石巻駅前)
▽17日 
 飲酒運転根絶署名簿提出式(石巻署) 
 二輪車講習(東松島・航空自衛隊松島基地)
▽18日 
 河北地区マナーアップ新装キャンペーン(石巻・ウジエスーパー桃生店) 
 飲酒運転根絶県民大会(登米市祝祭劇場) 
 ナイト作戦(石巻・検察庁前交差点)
▽19日 
 街頭キャンペーン(石巻・あいのや中里店) 
 飲酒運転根絶&シートベルト着用キャンペーン(女川・かまぼこ店「高政」付近交差点)
▽20日 
 シルバーナイト作戦(東松島・ロックタウン矢本)

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