(585)朝蟬よ若者逝きて何(な)んの国ぞ/金子兜太(1919~2018年)
風景を美しく描写する俳句がありますが、人間の思いをストレートに、強く打ち出すものもあります。戦争か、貧困か、絶望が理由なのか、しかし若者が死んでしまってなんの国だろうか、という深い嘆きと怒りです。蝉(せみ)は夕方から夜にかけて羽化し、気温の上昇や光を受けて鳴き始めます。朝蝉は生まれて初めて出す声、…
関連リンク
- ・(584)応援団(エンダン)の腕炎熱を巻き上げる/岸快晴(2004年~)
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- ・(580)新緑の匙(さじ)より蜜の垂れにけり/森賀まり(1960年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。