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いしのまき食探見>アサリ 一粒一粒、努力の結晶

万石浦の干潟でアサリ漁をする石巻湾支所組合員ら
酒蒸し、パスタなど、料理の主役になるアサリ

 海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。

アサリ

 酒蒸し、みそ汁、ボンゴレビアンコ。アサリは料理に豊かな滋味を与えてくれる。

 石巻市と女川町にまたがる万石浦は、アサリの産地として有名だ。海のない地域で育った私にとって、アサリ漁は未知で興味深かった。アサリ漁をする県漁協石巻湾支所と、アサリ出荷を担うヤマサ正栄水産(同市渡波)を取材した。

 東日本大震災以前は、40ヘクタールの干潟から毎年約50トンのアサリを水揚げしていた。震災による地盤沈下と津波で、干潟は浸食され、アサリも流出した。震災後4ヘクタールの干潟を再生。放流したアサリ種苗が定着し、2017年に漁を再開した。

 漁法も移り変わる。手間はかかるが「手でかくのが一番」と支所の担当者。震災前は大きい網で砂ごとすくい上げていたが、幼い個体も採れてしまう上、干潟が低くなって海草が根を張り、アサリが育ちにくくなってしまうという。また、干潟を耕うん機で手入れしたこともあったが、鋭い歯でアサリが死んでしまい、失敗に終わった。

 同社は入荷後、万石浦湾と工場内の水槽とで二重に砂抜きをする。その後、網から出したアサリを両手ですくい、約15センチの高さからステンレスの台に落とし選別する。口が開いたり死んだりしているアサリは音が違うという。阿部慎也社長(48)は「良い物をお客さんに提供したい」と手間を惜しまなかった。

 アサリ一つ一つにある、工夫と労力。生産者の努力の結晶を一粒ずつ味わいたい。
(石井季実穂)

<メモ>
 アサリは塩水で満たしたボウルに漬けて暗所に置くか、ぬれた新聞紙にくるみ冷蔵庫で保管する。購入後なるべく早く食べる。砂抜き済みでも念のため30分ほど砂抜きをする。万石浦アサリは、いしのまき元気いちばの直売所で購入できる。

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