(607)つかみたる螢の尻の硬さかな/甲斐由起子(1964年~)
蛍が光るのは求愛行動で、暗い中で相手に気付いてもらうためのようだ。俳句でも蛍には恋のイメージを投影することが多い。ところがこの句は実際に蛍に触れたときの手の感覚を詠んでいる。「つかみたる」の描写がリアルで、読者もその尻の意外な硬さを感じた気になる。俳句は五感で作るのが良いが、ほとんどは視覚の句。そ…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。