林業を身近に 石巻移住の森さん夫妻が創業 木工品販売や体験会企画、共感育む
東日本大震災をきっかけに石巻市に移住した夫婦が、牡鹿半島の山林を住民から借り受けて林業に取り組んでいる。丸太を販売する従来形ではなく、チェーンソー教室や間伐材を加工した家具・食器の販売などを収益の柱に据える。山林の整備と資源の有効活用を図りながら、自然の尊さを感じてもらう機会も設けることで、豊かな海や森の保全につなげようと力を注いでいる。
夫婦は、神奈川県出身で元市6次産業化・地産地消推進センター職員の森優真さん(41)と、兵庫県出身で同市北上地区のまちづくり団体に勤務していた佳代子さん(40)。石巻市で出会い、結婚した。市中心部の自宅から牡鹿半島に通い、事業に取り組む。2人は「毎日時間が足りない」と充実した表情で話す。
優真さんは6次化センターの仕事や趣味のスキューバダイビングを通し、豊かな海を守るためには背後に広がる里山や山林の整備が欠かせないことを痛感。2017年から同市桃浦地区に畑を借り、山にも活動のフィールドを広げた。
仕事の傍ら、県内外の講習会に通ってチェーンソー技術を磨いた。本格的な事業化を決めた昨春、6次化センターを退職し、桃浦地区を拠点とする合同会社「もものわ」を設立した。
一般向けチェーンソー講習会が少なく苦労した経験から、誰もが林業に触れることができる教室を企画。チェーンソー操作から、100年先を見据えた間伐のポイントまで本格的に学べるコースも設けた。所有する山を自分で管理したいという参加者も増えている。1月に開いた全4回の初心者向け講座は、首都圏の学生など12人が受講した。
佳代子さんは木や葉から抽出した精油や化粧品を手がけ、人と森をつなごうと森林浴や化粧品作りのワークショップを展開する。東京での会社員時代、忙しすぎて体を壊した。石巻で森や山を歩き、健康を取り戻した経験から「地元の人から里山の暮らしの知恵を学ぶ中で生きる自信、強さが身についた。森の力を感じてほしい」と話す。
優真さんは「海、山、里の資源が好循環する事業モデルをつくるのが目標。活動の輪を広げ、豊かな海や森を守りたい」と意欲を燃やす。
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