(611)鳥の瞳(め)の破船つまづく蟻と蟻/小松雅朗(1937年~)
いい景色である。広い大海原を望む、やはり広い砂浜。海鳥がじっと止まっている、その視線の先に一つ、破船。近寄って見ると蟻(あり)の列。しかも「蟻さんと蟻さんがごっつんこ」している。それだけなのだが、「つまづく」に蟻への限りない愛情が感じられ、海辺の景色の中に溶け込んだ作者自身の姿も見えてくるようだ。…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。