(616)五月雨(さみだれ)や根を洗はるる屋根の草/寺田寅彦(1878~1935年)
作者は夏目漱石の弟子にして物理学者。物をよく見てありのままを写し取ろうとする「写生」は正岡子規以来の俳句の骨法だが、科学における「観察」とも近しいものがある。植物の種が鳥によって運ばれ屋根に根付いたか。昔は藁(わら)ぶき屋根の家もあったので自然に草が出たか。植物は地面に生えるものという既成概念が覆…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。