(620)わが死後へわが飲む梅酒残したし/石田波郷(1913~1969年)
友人のKは家が大学に近く、よく遊びに行っていた。Kは酒を好むわけではなかったが、私が強く勧めて一しょに梅酒を漬けたことがある。遊びに行くたび、瓶の中の焼酎が少しずつ色づいていくのが楽しみだったものだ。Kが仙台を離れるとき、結局梅酒はほとんど減っておらず、私がもらうことになった。「うめしゅ」とひらが…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。