(621)夏山中祈れば尖(とが)る耳二つ/川崎三郎(1935~1984年)
夏の山の中、作者は真剣な祈りを捧(ささ)げています。それは山中のお墓かもしれませんし、神社仏閣や道祖神など神聖な物かもしれません。手を合わせると人は自然と目をつむります。情報の多い視覚が閉じられると音や肌を過ぎる風に敏感になりますね。鳥の声、葉擦れの音、遠く清流のせせらぎ。それらを聞き分けるように…
関連リンク
- ・(620)わが死後へわが飲む梅酒残したし/石田波郷(1913~1969年)
- ・(619)釣堀に君と映らむ一日かな/山西雅子(1960年~)
- ・(618)まんなかに始まりのある水馬/鴇田智哉(1969年~)
- ・(617)冷蔵庫の明りの中でハムを食ふ/斉藤志歩(1992年~)
- ・(616)五月雨(さみだれ)や根を洗はるる屋根の草/寺田寅彦(1878~1935年)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。