(622)生きてあれば癈(はい)兵の霊梅雨びつしり/佐藤鬼房(1919~2002年)
「癈兵」とは傷病兵のこと。戦後十数年経(た)った私の幼少の頃にも、戦場で身体の一部を失った元兵士が白衣姿で物乞いをしており複雑な思いを抱いた。鬼房自身肺浸潤により病院船で帰国するまでの間に多くの戦友が亡くなった。その死者たちと一緒に帰国したという思いなのだろう。「びつしり」は梅雨の雨粒であり、彼に…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。