(624)硝子器は蛍のごとく棚を出づ/山口優夢(1985年~)
季語には季節の情感が含まれますが、「ごとく」などを付けて比喩になると、実態がなく季感が薄まるという考え方があります。どちらでもいいじゃないかと思っていましたが、この句の繊細なバランスに得心がいきました。厳密に言えば無季の句かもしれませんが、比喩の蛍が帯びる夏の気配が器にほんのりとかかり、硝子(がら…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。