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「離岸流」甘く見ないで 野蒜海岸で調査、3本確認 宮城海保

離岸流の動きを観測するため着色剤を投入する宮城海保の職員
水上オートバイを用いた漂流者救助訓練

 海水浴シーズンを前に宮城海上保安部は11日、遊泳中の事故防止につなげようと「離岸流」の調査を東松島市の野蒜海岸で行った。石巻地方での離岸流調査は初めて。着色剤を使用して離岸流の発生状況を調べた。

 離岸流は海岸に打ち寄せた波が沖に戻ろうとする際に発生する強く、速い潮の流れ。遊泳中、気付かずに沖に流されてしまう危険性がある。

 調査には、水の力学解析が専門の長岡技術科学大の犬飼直之准教授が協力した。無害で緑色の海面着色剤を2回に分けて投入した結果、約100メートル間隔で少なくとも3本の離岸流を確認した。

 犬飼准教授によると、野蒜海岸の離岸流は間隔が狭く、長さは50~60メートル程度で短いという。「離岸流は地形によって変わる。東日本大震災の津波被害があった地域は徐々に地形が変わる可能性があるので長い目で調査を継続する必要がある」と話した。

 県内では、過去5年間に14人が遊泳中の事故に遭い、うち8人は離岸流が原因の一つと考えられている。

<漂流者を救助訓練>

 宮城海保の笠原司交通課長は「離岸流はどこでも発生し得る。海で遊ぶ時は事前に離岸流の調査がされていて、直ちに救助が可能な海水浴場で遊ぶようにしてほしい」と呼びかける。もし離岸流に流されたら、岸と平行に泳げば、流れから逃れやすいという。

 漂流者救助訓練も行われ、仙台航空基地の機動救難士が漂流者役を務め、海上安全指導員が水上オートバイで救助した。

【体験取材】岸が遠くなる怖さ実感

 離岸流を体験取材した。初めてのウエットスーツに身を包み、救命胴衣とヘルメットをかぶると緊張感が高まる。第2管区海上保安本部仙台航空基地の機動救難士2人と一緒に、離岸流があるという海辺を沖に向かって歩いた。胸の辺りまで漬かる。脚を上げると、あおむけに浮かんだ。

 この日は離岸流が弱く、強い流れを感じることはできなかったが、気持ちいい波に乗っているうちに岸がだんだん遠くなっていった。気が付くと海底に足が着かないところまで流されていた。経験したことのある人も多いだろう。岸に向かって泳いでみたが、陸はわずかに近づくだけで、たどり着くまでは時間がかかると感じた。

 「流されている」という感覚がないまま岸が遠くなってしまうのが離岸流の怖さだと実感した。体験取材では救命胴衣の浮力と、救難士のサポートのおかげで岸に戻れたものの、実際の海水浴だったら1人では戻れないのではないか。

 離岸流を甘く見てはいけない。遊泳禁止の海岸では泳がないこと、救助環境の整っている場所で海を楽しむことが大切だ。(石井季実穂)

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