(643)箱眼鏡外せば父も母もなし/土方公二(1948年~)
子どもの頃の川遊び、箱眼鏡で水中の世界を覗(のぞ)くことに時間を忘れて熱中していた。ふと我(われ)に返り箱眼鏡を外すと、近くで見守っていた両親の姿がない。そんな記憶から現在へ、いつの間にか老年となっている私。作者には<父母に永遠(とわ)の帰省子稲の花>の句もある。父母の元に居た少年は、故郷を離れて…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。