(644)かたはらに硯の匂ふ涼みかな/日向美菜(2002年~)
風を感じる。簀(す)の子(こ)を立てた文机に、開けっ放しのふばこ。畳の藺草(いぐさ)の香りに混ざって、すーっと庭木の緑の香りも通ってゆく。硯(すずり)はちょっとした手紙や熨斗(のし)紙を書くような小型のものだろう。いつも「かたはら」にある座右の愛硯(あいけん)。先ほど磨(す)った墨の香りが残ってい…
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