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水難事故防止に長年注力 東松島で震災経験の安倍さん夫妻、小中学校で着衣泳指導

着衣泳の授業で子どもたちを指導する淳さん(右)と志摩子さん(中央)=13日、石巻市雄勝町

 水難事故防止の取り組みに長年力を入れている夫妻がいる。暮らしていた東松島市野蒜地区で東日本大震災に遭い、今は大崎市鹿島台に暮らす安倍淳さん(64)と妻の志摩子さん(61)。潜水土木工事会社を営む傍ら、震災前から石巻地方などの小中学校に出向いて着衣泳の指導に当たり、昨年からは地元海水浴場にライフジャットを寄贈している。震災の津波に流された経験を持つ2人。「一度命をなくしたようなもの。自分たちのできることをしたい」と話す。

 石巻市雄勝小・中学校で13日に行われた着衣泳の授業。高台の校舎から臨む雄勝湾で、あおむけに浮かんで救助を待つ「背浮き」などを実践した。ライフジャケットの正しい着用方法や水中での移動、体温を下げにくくする姿勢も解説し、中学生には救命器具の使い方も紹介した。

 雄勝中3年の末永梨乃さん(14)は「実際の海で体験ができ、救助についても学べた。いざという時は授業を思い出して実践したい」と有事を想定した。

 震災前、淳さんが生まれ育った東松島市野蒜地区に自宅と事務所を構えていた。震災の日、押し寄せる津波を見て自宅と事務所にそれぞれ避難した2人は建物ごと流された。淳さんがいた建物で合流したが、流されるうちに建物が大破。床板の上で漂流し、自宅があった鳴瀬川河口付近から約7キロ離れた場所にたどり着いた。淳さんは負傷したが、2人は奇跡的に助かった。志摩子さんは「99%命を落としてもおかしくなかった」と振り返る。

 淳さんは一般社団法人水難学会の理事、志摩子さんは上席指導員を務める。ほぼボランティアで開く着衣泳の授業は約20年前に始め、震災の年も途切れず続けてきた。志摩子さんは「水の事故はさっきまで元気だった人が命を失ってしまう。周囲の人も悲しむ事故をなくしたい」と願う。

 経営する「朝日海洋開発」としては、子ども用を中心としたライフジャケットを東松島市の海水浴場に寄贈している。昨年は12年ぶりに海開きした野蒜に60着、今年は月浜に70着を贈った。月浜海水浴場では海水浴客に貸し出され、野蒜でも近く始める。淳さんは「ライフジャケットは水の事故を一時的に防ぐ効果がある。繰り返し使う物なのでしっかり点検し、正しく装着した上で使用してほしい」と呼びかける。

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