(649)空蟬(うつせみ)に水溜りゐる山河かな/正木浩一(1942~1992年)
空蟬は蟬の抜け殻。殻を脱ぎ捨て羽化した蟬の寿命は1週間から数週間という。一方、樹(き)の幹や葉に引っかかっていた空蟬は、風に吹かれるなどしてそのうち地面に落ちる。雨も降り、殻に溜(た)まった水の小さな水面は山河を映し出す。やがて水は殻からあふれて地面にしみ込んでゆく。残された空蟬は朽ちて土に還(か…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。