次の100回へ 「石巻川開き祭り」振り返る 会場は、日程は
100回目を迎えた石巻川開き祭り(実行委員会主催)が4~6日、石巻市中心部で開かれた。節目を記念して3日間の日程で開催され、人出は東日本大震災後最多の27万6000人を記録した。祭りは昨年から日程を土日開催に変え、今年は花火会場を震災前の開北橋下流に戻した。時代に合わせ、形を変えながら受け継がれてきた伝統の祭典は次の100回に向かう。参加した市民の声と共に、節目の祭りを振り返る。(石巻川開き祭り取材班)
<大迫力の花火、評価高く>
「花火の迫力がすごかった。体に衝撃が走った」。開北橋下流での花火大会を初めて体験した同市中里小4年の那須野友斗君(10)は興奮気味に語った。
5日の花火大会は震災前と同規模の約1万6000発を打ち上げた。連発するスターマインなどが次々と上がり、尺玉など大型の花火は真上を見上げるほど高かった。大音量と振動が観覧者の体を震わした。
開北橋下流は安全確保に十分なスペースがあり、東北有数の豪華な演出を復活できた。震災後の会場だった中瀬や石巻大橋下流とは、6000発ほどだった打ち上げ数も含め、迫力の差は歴然だった。
感想を聞いた市民の評価は軒並み高かった。同市出身の大工伊藤潤人さん(20)=大崎市=は「(仕掛け花火の)ナイアガラを見て『石巻の花火だ』と思った。元の場所に戻ってよかった」と歓迎した。
会場を巡っては、実行委が2、3月に実施したアンケートで開北橋下流は7割近くの支持を得た。一方で、会場変更による中心市街地の経済効果低下への懸念もあり、商店主や市民から中瀬での開催を求める要望書も提出された。
実行委は中心市街地の活気を保つ狙いもあり、花火大会の夜に中瀬でミュージシャンの特別ライブを開催。「中瀬や中央地区に人が集まっていた。効果はあった」と受け止める。
一方、中心市街地関係者の見方は違った。60代男性店主は「花火の夜、街中は閑散としていた」と言う。
花火は祭り創設時から長らく、内海橋や中瀬の周辺が会場だった。「『市街地ににぎわいを』という先人たちの思いだ。大きな花火でなくても、工夫次第で見応えのある内容にできるのではないか」と提言する。
<規模の維持、予算が壁>
実行委は、来年の花火大会の開催場所も開北橋下流を基本方針とする。ただ、会場が変わらないとしても、花火大会が同規模で実施できるかは不透明だ。予算の確保が大きな壁になる。
記念行事の運営費もあり、今回の予算案は前回決算からほぼ倍増した。花火を担当する煙火部は2946万円で、前回決算から77.6%増えた。花火の企業協賛は2000万円ほどで前回から倍増したが、100回記念を理由に協力した企業も多いとみられる。実行委は「来年は規模が落ちるかもしれないが、打ち上げ数はなんとか維持したい」と話す。
全体予算では、市が例年900万円の負担金を2900万円に増額した。来年以降は通常の水準に戻ると見込まれる。水産業を中心に地元経済の状況は厳しく、企業協賛も同水準を維持するのは簡単でない。
実行委は今回、約1300席の有料観覧席と800台分の有料駐車場を用意。1000万円ほどの収入になった。
有料観覧席などを返礼品にしたクラウドファンディングも初めて導入し、約250万円を集めた。実行委の担当者は「今後は個人協賛の拡大を図っていく必要がある」と強調する。
<大渋滞、駐車場を追加>
交通渋滞や会場周辺の混雑への対応も求められる。花火大会の人出は15万人を数えた。5日午後は会場方面に向かう市内の道路が大渋滞。計約2000台用意した駐車場は会場近くから順次埋まった。臨時で数百台分を追加したが、花火開始後も渋滞は続いた。
会場周辺では大橋地区の市、県有地に設けた無料観覧エリアは比較的スペースに余裕があった一方、観覧場所でない川岸などに多くの人が集まり、一部プログラムの進行にも影響した。
震災前に常態化していたごみの散乱は、入場ゲートで回収した効果もあり、目立たなかった。近隣住宅地での迷惑駐車なども確認されなかったという。
地元の水明町内会の戸田正勝会長(78)は「マナーは良かったのではないか」と評価。来年以降については「大きい花火を上げるなら開北橋付近だろう。開催がうれしいというわけではないが、地元として受け入れる。皆さんが喜んでくれればいい」と語った。
<土日開催、歓迎 猛暑には閉口>
昨年から土日に変更した開催日程に関しては、参加者、見物客ともに歓迎する声が多かった。大漁踊りに参加したスポーツクラブ「ジョイフィット24ライト石巻」(石巻市中里3丁目)の西塚俊平さん(27)は「平日は仕事なので、土日開催はありがたい」と喜んだ。
以前の7月31、8月1日の日付固定と違い、土日開催は他地区の夏祭りと日程が重なる可能性がある。今回は5日の花火大会が仙台市の「仙台七夕花火祭」とぶつかった。実行委は「影響はあった。ドローンショーがなければもっと大きかっただろう」とみる。
期間中は3日間とも真夏日となった。石巻市によると祭り期間中、10人が熱中症の症状を訴え救護所で処置を受けた。
近年の猛暑を受け、福島県相馬地方の「相馬野馬追」など真夏以外の時期へ開催日の変更を検討する祭りもある。川開きで6日にあった小学校鼓笛隊は、学校活動の基準に基づいて判断し、実施を決めた。より暑かった前日なら中止になった可能性もあるという。
参加した同市中里小5年の藤村春美さん(10)は「暑くて足も痛い。お祭りは涼しい方がいいかも」と話した。母親の遥さん(28)も「暑さ対策のため涼しい時期にずらしてもいいと思う」と語った。
祭りを未来に継承していくための課題は少なくないが、100回の節目は盛り上がり、大きな事故もなく幕を閉じた。
フィナーレの大漁踊りを踊り切った東北電力石巻電力センター所長の斎藤清晴さん(56)は「コロナ禍を忘れさせる3日間だった。来年以降につなげてほしい」と期待した。
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