(661)盆灯籠消さずに眠る母あかり/上田玲子(1941年~)
作者は福島県会津地方の出身。亡くなった母の新盆に詠まれた句である。あの世から母の魂が家に戻る目印に、一晩中盆灯籠を灯(とも)す。その薄灯(あか)りを頬に感じながら床に就く。「母あかり」という作者の造語には、無事家にたどり着いた母が盆灯籠に宿り、眠っている我(わ)が子を包み込んでいるような優しさが感…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。