被爆者の思い伝えたい 「父と暮らせば」石巻公演 家族愛、観客引き込む
被爆から3年後の広島を舞台にした故井上ひさしさん作の2人芝居「父と暮せば」石巻公演(山形県・川西町演劇研究会主催)が19、20の両日、石巻市中央1丁目のシアターキネマティカで行われ、観客は原爆の恐ろしさを知るとともに家族の愛や再生の物語に引き込まれた。
「父と暮せば」は、原爆で生き残ったことに罪悪感を抱き、好意を寄せる青年から逃れようとする美津江の前に、原爆で死んだはずの父の竹造が現れて娘の心を開かせようとする。
竹造に扮(ふん)したのが同研究会会長で南陽市在住の俳優古川孝さん(74)。2013年5月から竹蔵役で公演を重ね、石巻公演が98回目だった。美津江役を19日が鶴英里子さん、20日は椎雫結壬さんと山形県在住の俳優が日替わりで演じた。
父と娘の会話で成り立った約1時間半の舞台に込めたのは、大勢の命を一瞬にして奪った原爆への怒りであり、娘の将来を思う父の愛情であり、生かされた者が生きる力を取り戻そうとする姿だった。
1日目に観賞した石巻市在住の俳優大橋奈央さん(28)は「生き残った娘に共感した。私自身、東日本大震災を伝承する演劇活動に取り組んでいるので、舞台にかける古川さんに学ぶことが多かった」と語る。
古川さんは「演劇との出合いは、井上さんが古里の川西町で開いた演劇学校に参加した時。50歳だった。その後『父と暮せば』を見て自分でやってみたいと思った。まさか10月の山形市公演が100回目を迎えるとは。体力の続く限り被爆者の思いを伝えていきたい」と決意を新たにする。
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