閉じる

わいどローカル編集局 > 飯野川(石巻市・河北地区)

 「わいどローカル編集局」は石巻地方の特定地域のニュースを集中発信します。9回目は「石巻市飯野川地区」です。

   ◇

宿場町の面影今も 繁栄願い、町並み「人の字型」

 江戸時代に宿場町として開かれ、今もなおその痕跡を感じることができる。

 郷土資料「わがふるさとの町飯野川」によると、地名の由来は北上川に注ぐ小川の名前。伊達家の家臣だった葛西、大崎両氏が北上川に船を常置したことを記した1600年8月10日付の船止め日記に「いいの川」と出てくるのが始まり。

 明治維新までの200年以上、葛西氏とその後の大立目氏が領主として町づくりに貢献。葛西俊信が相野谷村の領主となり、2代重常が村の一部だった飯野川で町づくりを始めた。現在の飯野川小辺りの館に移り住み、宿場町を造ることを目指した。

 町並みは人心の和みによる平和な郷土の発展を願い「人の字型」とした。

 人の字の書き出し部分を「町頭」とし、左払いを本町、右払いを上町とした。現在の飯野川バス停付近が町頭、本町は河北郵便局方向に延び、上町が河北消防署方向に当たる。

 1665年には市日を制定し、月に6回ほど市を開催。重常夫人は市に並ぶ店の繁栄を祈って市(いち)神社を勧請した。市神社は現在の亀ケ森八幡神社境内に移されている。「一六の市」と言われ、茶屋やはたご屋などが繁盛し、立派な宿場町に成長した。

 1769年に葛西氏が失脚、75年に大立目盛行が領主となり、1871年まで6代にわたり土地を治めた。大立目氏6代の墓は飯野川小の裏手に現存している。

歴史生かし、まちおこし 商店主ら勉強会

大立目氏の御廟を案内する生出さん

 商店街には、約350年前からの町並みが残る。歴史ある地域に誇りを持ってもらおうと、地元商店主らが2011年に河北まちづくり研究会「なつかしの町・飯野川」を設立した。

 研究会は伝統料理や商店街の町並み、地域の文化などを研究・考察しながら「昔」をテーマにまちづくり事業を展開する。飯野川まちなかイベント「ございん」や勉強会を開催。飯野川に伝わる伝説や食文化を研究したり、飯野川の歴史に詳しい講師を招いて知識を深めたりした。

 まちおこしにも力を入れる。飯野川の歴史が感じられるスポットやお店を紹介した地域散策マップや、数々の伝説を分かりやすくまとめた紙芝居などを作成した。

 研究会のメンバー、生出竜哉さん(66)にスポットの一つ大立目氏の御廟(ごびょう)を案内してもらった。草木が生い茂る中、六つの法名が刻まれた御廟があった。現在でも町の生い立ちを感じることができる。

 近年は新型コロナウイルスの影響もあり、思うように活動できない状況が続いている。生出さんは「今後は飯野川の歴史やお店などを面白くまとめた町誌のようなものを作りたい」と話した。

河北セリ、300年超の歴史 栽培管理徹底しブランド化

飯野川地区の在来種を育てる春セリの収穫作業=4月、石巻市馬鞍

 飯野川地区は伝統野菜「河北セリ」の産地。北上山系からの豊富な伏流水を生かし、300年以上前から栽培されている。

 セリは栽培に時間と手間がかかる作物だ。土作りから収穫、選別までのほとんどが手作業。中でも河北セリは丁寧な管理を徹底しており、味や鮮度への評価が高い。2020年には地域の農林水産物や食品をブランドとして守る地理的表示(GI)保護制度に登録された。

 10月~翌年2月の秋冬に出荷する「根セリ」と、4、5月の春の「葉セリ」がある。品種が異なり、葉セリに育てるのが飯野川地区の在来種「飯野川在来」だ。冬を越して養分を蓄えた根から芽吹いた茎葉を収穫する。

 セリ鍋ブームで需要が高まる根セリは根ごと食べるが、葉セリは新芽の柔らかくて癖のない味が特長。柔らかいため長距離輸送に向かず、出荷時期も短いため、地元にしか流通しない貴重な素材だ。

 おひたしや天ぷらなどで食べるのがお勧め。いしのまき農協セリ部会の高橋正夫会長(76)=石巻市相野谷=は「柔らかくて香りが良い。浅漬けなら丼で食べられる」とPR。「後継者不足など課題もあるが、地域の伝統的な食文化を守っていきたい」と語った。

商店街ぐるり食べ歩き

 飯野川商店街に軒を連ねる菓子店や飲食店。取材の合間に足を止めたくなった。ここでしか味わえないグルメを食べ歩いてみた。

■食堂きかく「どぶ漬け唐揚げ」 ヘルシーな味、何個でも

特製ダレに漬け込んだどぶ漬け唐揚げ

 タレにどっぷり2日以上漬けて揚げるから、「どぶ漬け唐揚げ」という。

 カリカリの衣とニンニクの香りが食欲をそそる。鶏胸肉を使った唐揚げは脂身が少なくヘルシー。さっぱりとしていて何個でも食べられる。甘塩っぱさに白米が欲しくなった。

 食堂きかくの唐揚げは、飯野川で昔から親しまれていた懐かしい味を再現。店主の佐藤宗雄さん(75)は「きかく特製のタレで最後までおいしく食べられるようにした」と話す。

 店には地元の食材を使ったメニューが豊富で、唐揚げのお供を探すのも良いかもしれない。

 営業は午前11時~午後2時。月曜定休。連絡先は0225(62)3381。

 

■中国料理 吉華「サバだしラーメン」 香り豊か、あっさり風味

透き通るスープが美しいサバだしラーメン

 スープを一口含むと優しいサバだしの香りが広がる。中国料理吉華で飯野川発「サバだしラーメン」を堪能した。

 石巻に水揚げされたサバを丸ごと焼いて、だしを取る。あっさりとしたスープが特長。細くストレートな麺とよく合う。サバのすり身で作ったカレー風味の団子もふわふわでおいしい。

 店主の阿部雄吉さん(68)と妻光子さん(64)は「あっさりとしていて誰でも食べやすい」と胸を張る。

 9~10月には河北産のべっこうシジミを使ったシジミスープチャーハンも登場。飯野川グルメの食べ歩きはやめられない。

 営業は午前11時~午後2時半、午後4時半~午後7時。月曜定休。連絡先は0225(62)2701。

 

■洋菓子ヤマキ「せりロールケーキ」 優しい甘さと食感、魅力

河北セリを練り込んだロールケーキ

 独特な風味が癖になるセリ。おいしいけれど、これまで鍋でしか食べたことがなかった。特産の河北セリを使った「せりロールケーキ」を発見。青々とした色からは、セリ独特のいい香りが漂ってきそうだ。

 食べてみると不思議とセリの風味はなく、バタークリームと真ん中に巻かれたユズあんの優しい甘さが際立った。生地の中には細かく刻んだセリ。葉や根の食感を楽しめた。

 山崎喜之さん(67)と妻洋子さん(64)が開発した。喜之さんは「地元の食材を使い、鮮度を大切にしたお菓子を作っていきたい」と話した。

 営業時間は午前9時~午後6時半。月曜定休。連絡先は0225(62)3131。

   ◇

 今回は飯野川・橋浦販売店と連携し、保科暁史、相沢春花の両記者が担当しました。次回は「石巻市蛇田」です。

関連リンク

関連タグ

最新写真特集

石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

三陸河北新報社の会社概要や広告、休刊日などについては、こちらのサイトをご覧ください

ライブカメラ