(677)稲妻や牛かたまつて草の原/大須賀乙字(1881~1920年)
初秋の夜、遠い空に走る稲光。放牧している牧場であろう。牛たちは、夜の原っぱの一隅に寄り集まって眠っている。瞬間、稲妻。牛の群れが雷の一閃(いっせん)のうちにくろぐろと浮かび上がる。ほのぼのした夜の山の景を稲妻が爽やかに照らす。稲妻の鋭い光に対して山の闇がやさしい。激しい稲妻の描写なのに、牧歌的な雰…
関連リンク
- ・(676)桃冷す水しろがねにうごきけり/百合山羽公(1919~2002年)
- ・(675)先達のありて群れ発つ稲雀(いなすずめ)/志摩陽子(1941年~)
- ・(674)三郡の水平らかに稲の花/石井露月(1873~1928年)
- ・(673)稲の香の溢れる道を夜勤明け/佐藤みね(1941年~)
- ・(672)透明や皮より葡萄出づるとき/野名紅里(1998年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。