(692)をりとりてはらりとおもきすすきかな/飯田蛇笏(1885~1962年)
山も野もなく、作者と薄(すすき)があるだけ。折られた薄が、折られたことによって秋風の中にひかりを放つ。作者の手にふと触れた穂薄を折り取ったときの、薄の乱れ方の美しさ、そしてその美しさに相応(ふさわ)しい、少し手にこたえるくらいの按排(あんばい)の、軽やかな重み。ところでこの句、全てがひらがな。「は…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。