(693)颱風(たいふう)過ぽつんと畦に婆がゐる/橋場雅秋(1932年~)
「台風過」は台風が過ぎ去ったあとを指します。暗雲と豪雨の後は雲が一掃され、空は晴れ渡りますが、大地はそうではありません。街への被害や、田の稲が広範囲で倒れることもあります。畦(あぜ)道にいるお婆(ばあ)さんの具体的な様子は分かりません。被害に対する奮起か落胆なのか、いずれにせよ荒れ狂う自然を受け入…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。