ツール・ド・東北 力走10年、共に前へ 1900人、被災地のいまを体感
東日本大震災で被災した県沿岸部を自転車で巡る「ツール・ド・東北2023」(河北新報社、ヤフー主催、三陸河北新報社など共催)は最終日の17日、石巻地方など2市2町を走る4コースで行われた。2013年に始まったイベントは今年で10回目。2日間で全国から集まった約1900人が被災地の現状を感じながら海沿いのコースを走り抜けた。
石巻専修大を発着点に、気仙沼(210キロ)南三陸(150キロ)北上(100キロ)女川・雄勝(65キロ)の4コースで開催。午前5時半から順次スタートし、ライダーは三陸の自然豊かな風景や住民との交流を楽しんだ。石巻市の震災遺構「大川小」には多くのライダーがコースをいったん外れて立ち寄るなど、震災の被災、復興状況にも触れた。
各コースには休憩所となるエイドステーションが設けられ、地域住民らが地元の特産品を使った「応“縁”飯」を提供してライダーの背中を押した。
会社の自転車仲間4人と参加した東京都の植田圭一郎さん(39)は通算5回目の参加。「新しくできた道路や防潮堤、住宅を見て、人の力のすごさを感じた。毎年温かく迎えてくるのもうれしい」と楽しんでいた。
ツール・ド・東北は順位やタイムを競わないファンライド方式。13年から毎年開かれてきたが、20年は新型コロナウイルスの影響で中止し、21年は仮想現実(VR)技術で被災地での走行を疑似体験する「バーチャルライド」を実施。22年は感染対策で規模を縮小して開催した。
エイドステーション、自慢の味でおもてなし
地元のもてなしも参加者の楽しみの一つ。石巻地方の女川、雄勝の両エイドステーション(AS)では海産物を生かしたグルメが振る舞われ、ライダーたちを励ました。
■女川AS サンマ汁で元気補給
ライダーが最初に立ち寄る女川ASは女川町のJR女川駅前広場に設けられた。町商工会女性部のメンバーら約20人が、サンマのすり身団子とネギや豆腐を加えた「女川汁」を提供した。
午前5時から準備を始め、大釜で2200杯分を作った。暑さを考え、アツアツの1杯と少し冷ました2種類を用意。ライダーを「お疲れさま、頑張って」とねぎらいながら手渡した。
女性部長の島貫洋子さん(67)は「女川汁をわざわざ食べに来てくれる人がいる。おいしいと言ってもらえてうれしい」と話した。
4回目の参加だった千葉県の会社員西藤康浩さん(52)は「女川汁を求めて毎年来ている。次は雄勝のホタテが楽しみ」と笑顔で駆けだした。
■石巻・雄勝AS ホタテ焼きで疲れ癒やす
雄勝ASは石巻市の雄勝地区多目的広場に開設され、ライダーらをホタテ焼きで歓迎した。
市雄勝総合支所職員や地域のボランティアら35人が、約2600枚のホタテを炭火で丁寧に焼き上げ、提供した。貝毒の影響で地元産ではなく、女川町産のホタテを使用。味付けはせず、ホタテのうまみと程よい塩味をライダーに味わってもらった。
にかほ市の会社員小番保さん(43)は「歯応えがあり、かむほどに味がする。おいしくてビールがほしくなってしまった」と笑顔で話した。
雄勝総合支所地域振興課の石川儀幸課長(54)は「おいしく提供でき、元気よくもてなせた。来年こそは雄勝産のホタテを食べてもらいたい」と語った。
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