(713)わたくしが昏(く)れてしまへば曼珠沙華/柿本多映(1928年~)
「昏」の字を使うと、辺りがだんだんと暗くなっていくことやアンニュイな印象がより強くなります。夜を迎える間際の日暮れの様子を自分に当てはめて使っていますが、全盛期に比べ肉体の衰えを感じたのか、落ち込むような出来事があって表情が翳(かげ)ったのでしょうか。自分の存在が曇る時、曼珠沙華(まんじゅしゃげ)…
関連リンク
- ・(712)鹿のなくさよならを言えない夜に/榎本佳歩(2005年~)
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- ・(710)虫の夜の底に残れる甕の水/高橋健文(1951年~)
- ・(709)考へず深く睡(ねむ)らむ鉦叩(かねたたき)/黒田杏子(1938~2023年)
- ・(708)柚子の香やはなればなれに座るべき/宇多喜代子(1935年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。