(721)腕時計失くして広き花野なり/関根杏華(2005年~)
花野。秋の草花で覆われた野原を言う。腕時計を失(な)くしたことと花野の実際の広さには因果的な繋(つな)がりも意味の上での繋がりもない。こうした取り合わせの作品を紹介すると「わかりません」とときどき質問されるが、大事なことは二つのものの出会いによって、作者の気分(特に季感)が一句に染み通っているかと…
関連リンク
- ・(720)鈍行てふ時間授かり豊の秋/大石誠(1937年~)
- ・(719)誰からもいま構われず 芒原/伊丹三樹彦(1920~2019年)
- ・(718)地は秋のゆふべの露を昇らしむ/眞島楓葉子(1933~1967年)
- ・(717)山中に貝の化石やいわし雲/太田土男(1937年~)
- ・(716)宵闇や手を泳がせて子が走り/山西雅子(1960年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。