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異例のロングラン、映画「有り、触れた、未来」 震災10年後の街が舞台 石巻・キネマティカ

「有り、触れた、未来」のロングラン上映に力を入れる矢口さん。壁のポスターには監督や出演者らのサインが入っている

 東日本大震災から10年後の宮城のある街を舞台にした映画「有り、触れた、未来」が石巻市中央1丁目のシアターキネマティカで異例のロングラン上映を続けている。12月24日にはイベント形式による上映会も計画、キネマティカならではの映画文化の発信に力を入れる。

 3月3日の先行上映から間もなく8カ月。全国の映画館での公開は既に終わったが、キネマティカだけが週1回のペースで上映しており、東京などから見に来る人もいる。市内の震災遺構を見学してから、ここで「有り、触れた、未来」を観賞し、被災地への理解を深めていくケースも少なくないという。

 キネマティカには映画を見た感想を書くノートが置かれており「これからの人生を一つ一つ大切に生きていきたい」「空を見上げて、少し息をして、また少し歩こうかな」「生きる力をもらいました」などと多くの共感する声が寄せられている。

 運営する石巻劇場芸術協会の矢口龍太さん(40)は「被災地に誕生したキネマティカで上映するからこそ意味があり、ずっと上映し続ける理由がある」と強調する。

 製作時に矢口さんと出会い、交流が続く山本透監督(54)は「映画館以外で長く上映してもらうのは初めての体験。キネマティカに街のカルチャースポットとしての可能性をすごく感じる」と語り、これから映画を見る市民に「支え合い、信じ合う心を持って前に進もうとする人々の姿を描いた。そのエネルギー、パワーを感じ取ってほしい」とPRする。

 今後の上映は27日、11月4、17、24日。各日午後1時から。12月24日はライブを含めた上映会を計画している。連絡先は0225(98)4765=水、金、土、日曜の午前11時~午後5時=。

石巻、東松島など全編県内ロケ

 映画「有り、触れた、未来」は元石巻西高校長の斎藤幸男さんの著書「生かされて生きる-震災を語り継ぐ」(河北選書)が原案。災害で家族を奪われた少女と生きる勇気を失った父親、事故で恋人を亡くした女性、娘のために末期がんと闘う母親らが「命」と向き合う姿を描いた群像劇。

 撮影を全編、石巻市や東松島市など宮城県で行った。桜庭ななみさん、碧山さえさん(宮城県出身)、鶴丸愛莉さん、北村有起哉さん、杉本哲太さんらが出演。上映時間は2時間12分。

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