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英吉の功績に光、再び 石巻市博物館2周年記念企画 「木彫の芸術性、全国に発信」

多くの市民が参加して行われた高橋英吉作品の展示解説。手前が「潮音」、奥が「黒潮閑日」

 石巻市開成の市博物館(市複合文化施設内)は3日、開館2周年を記念し同市が生んだ彫刻家高橋英吉(1911~42年)に関するイベントを開催した。市民は太平洋戦争のガダルカナル島で31歳の若さで戦死、夢を絶たれた英吉に思いをはせると同時に、英吉が残した木彫作品が貴重な文化財産であることを再認識、その優れた芸術性を全国に発信していくことを誓った。

 年に1度の観覧無料の日と重なってイベントには多くの市民が詰めかけた。午前は常設展示室で学芸員の作品解説があり、代表作の海の3部作(黒潮閑日、潮音、漁夫像)やスケッチ、手紙などを鑑賞。東松島市赤井の堀内太平さん(75)は「いつ見ても力強く迫力がある。戦争がなければ世界に誇れる作品を生んだかもしれない」と話した。

 イベントに合わせて「蝦蟇蛙」「馬」「鶴」の3点を貸し出した石巻市湊町の稲井理善さん(81)は英吉の親類で「家に置いておくよりも市民の目に触れる機会になれば」と語った。

 午後は企画展示室で、市民運動によって作られた英吉の生涯を描いたドキュメンタリー映画「潮音 ある愛のかたみ」(84年公開)上映会と、「生きている高橋英吉」をテーマにしたトークが行われた。

 映画完成に当時、尽力した橋本晶さん(郷土史家、1916~91年)の長女古内裕子さん(64)=石巻市蛇田=は「一人でも多くの人に映画を見てほしいという父の夢がまたかなった」と感慨深げだった。

 トークには石巻学プロジェクト代表の大島幹雄さん(70)=横浜市=が登場。8月に発行した地域誌「石巻学」第8号で英吉の特集を組んだ理由について「英吉は80年以上も前の過去の人ではなく今も市民の心に生きている」と説明。英吉の一人娘・幸子さん(82)=神奈川県逗子市=も映像で出演し父の故郷とのつながりに感謝した。

 学芸員の泉田邦彦さん(33)は「英吉が多くの人たちにとって『そば』にいる存在であることを実感した。市民目線で彼の人となり、作品の魅力を広く伝える方法を考えていきたい」と強調した。

 イベントは市博物館が開館した2021年11月3日にちなんで開催。開館日前日の11月2日は英吉の命日に当たる。市博物館は英吉関連資料約500点を所蔵している。

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