世相や家族、四季詠む144首 「つくも大学」短歌クラブ、2022年度の歌集発行
石巻市石巻中央公民館の高齢者教室「つくも大学」の短歌クラブが2022年度の歌集「四季の風」を発行した。会員11人と講師の中山くに子さんの作品144首を収録している。
昨年度は新型コロナウイルス一色の世相だった。「鬼は外オニハソトと追い遣れど居座り続けるコロナとう鬼」(千葉とみ子)。重篤化しやすい高齢者はワクチン接種にすら体力を保って臨んだ。「ワクチンの接種ちかづき畑仕事少し控えて家にこもれる」(草刈あき子)。
元気の源は友とのおしゃべりだ。「仕切り版に飛び交う話題切れもせずやがてそれぞれ杖持ち帰る」(松村千枝子)。いくつになっても、ときめいた思い出は宝物。「敬老会隣に座る人ありて片恋聞かさる昔のはなし」(岡本信子)。
思いを寄せてくれる家族。枯れるのが惜しくて惜しくて。「敬老日娘より贈られし花束の水切り幾度ひと葉枯るるまで」(松田悦子)。孫の成長を見守ることは生きがい。「病いえ孫の成人式間にあいて楽しい食事の卓を囲みぬ」(伊藤敏子)。孫が大きくなるということは…。「空みつめ孫送りゆく子の横顔に何時からありしかひとすじの皺」(須藤壽子)。
季節の移ろいが生活に映り込む。「手に余るほど摘みたりしが今朝五粒ブルーベリーの夏は終わりぬ」(後藤信子)。命輝く季節は春だけではない。「春菊芽ぶき菊芋花さかす煌めく朝日に秋風そよぐ」(山内くに子)。思いがけぬ発見がうれしい。「カサコソと落ち葉踏み分け山坂をおっ目の前に白ハツタケが」(亀山幸一)。
もはや老いや病は暮らしの一部。「くすり効き膝・腰・肩の痛みなし今この時と急ぎ草取る」(鈴木たゑ子)。「朝毎に色を増しいく道の辺のムラサキシキブ実の濃紫」(中山くに子)。人も日を積み重ね、実を膨らませていく。
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