窮地の伴走者 - 石巻・民間シェルターの活動から(4・完) おせっかいの輪、広げて
高橋共同代表に聞く
虐待や貧困などさまざまな問題に直面する地域の困窮者に対し、市民はどう向き合うべきか。民間シェルター「やっぺすハウス」を運営する石巻市のNPO法人やっぺす共同代表理事の高橋洋祐さん(39)に話を聞いた。(聞き手・西舘国絵)
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-現状をどう見るか。
「昔は家族が協力すればうまくいっていたかもしれないが、今は石巻のような地方でも関係が崩壊している。家族がかつて果たしていたような互助を社会システムに落とし込み、地域に助け合いの精神を根付かせたい」
-住まいをなくすほど追い込まれる前に助けを求められない困窮者が多い。
「そもそも困ったときに『助けて』と声を上げる方法を学校でも家庭でも学ばない。困っている人ほど人間関係が希薄で、人に頼るという発想が生まれがたいこともある」
「困窮者は苦境から抜け出すためにしなければならないことが多い。例えば配偶者から家庭内暴力(DV)を受けているなら、相手から逃げつつ離婚の手続きや家族との折り合いをつけることが必要。そこに子育ても加われば、とても1人で対処する余裕はない。寄り添って支える存在が求められる」
-法人の支援の特色は。
「行政の委託事業にあるような制度的縛りがないので、やろうと思えばなんでもやれる。制度化しづらい支援を民間が担い、行政と連係して困窮者を支援していければいい」
「われわれは専門的知識があるわけではなく、家族や友達のような感覚で『相手が困っているから手伝う』を繰り返しているだけ。専門家でなくてもやれることはある」
-具体的には。
「時代に逆行するかもしれないが、ご近所同士で自然に発生する相互の見守りなど、ちょっとしたおせっかいでいい。公的なシステムに頼り切らないで、地域に暮らす人たち自身が考えなければならない」
-地域に期待することは。
「困っている人を手助けする存在や、仲間になってくれる人が増えればいい。やっぺすハウスでは、入居者同士が相互に支え合う作用が自然に生まれている。この支えの輪が広がって根付けば、地域は変わると思う」
「見て見ぬふりや誰かのせいにするのではなく、地域をどうやって良くしていくのか、何ができるのかを一緒に考えて、できるなら行動してほしい」
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