(769)凩(こがらし)の果はありけり海の音/池西言水(1650~1722年)
雄大な句である。具体的に見えるものは、一句の中には描かれていない作者。作者が背にしている景色と作者が眼前に見ている景色、つまり陸と海という大きな境界が、十七音の中にせめぎ合っている。厚みのある把握だ。「果はありけり」という孤独な表現が、荒涼とした海辺の景色を際立たせる。見えない木枯(こがらし)の果…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。