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加非館、半世紀の歴史に幕 憩いの場の閉店、市民ら惜しむ 石巻・中央

加非館最後の日、別れを惜しみ多くの市民が詰めかけた

 市民の憩いの場として親しまれてきた石巻市中央2丁目の喫茶店「加非(こーひー)館」が18日、半世紀近い歴史に幕を閉じた。約40席ある店内は閉店を知って駆け付けた客で埋まり、港町を「カフェ文化」で照らしてきた店との別れを惜しんだ。

 加非館は1974年、ビル2階に開業。須藤哲也さん(78)と満智子さん(77)夫婦が二人三脚で切り盛りしてきた。開業当時は周囲に市役所や百貨店、映画館、銀行などがあり、街中の喫茶店としてにぎわった。マスターの哲也さんは「平日はサラリーマンや公務員が相手だった。土・日曜になると客層が変わり、家族連れや買い物客らが目立った」と振り返る。

 東日本大震災では地震と津波の被害で休店を強いられたが、3カ月後には再開し、県内外のボランティアや演劇人、若いアーティストらの交流・創造の場になった。

 約50年間、街の変遷を見守ってきた。変わらなかったのはおいしいコーヒーにこだわるマスターと、誰とでも気さくに話す満智子さんの息の合ったコンビぶり。2人の人柄に引かれて足を運ぶ市民らで、店内はいつも和やかだった。

 閉店は「体力的に限界のため」という。最後の営業となった18日は常連客や隣近所の商店の人たちが押し掛け、カウンターもテーブル席も終日ほぼ満席。マスターの淹(い)れるコーヒーと店自慢のホットケーキなどで最後のひとときを過ごした。

 5年前、同市に移住した写真家の山田真優美さん(43)=香川県出身=は「落ち着いた雰囲気の店で好きだった。いろんな人と出会えて、よそから来た私も居心地が良かった」、帰省すると加非館のコーヒーを楽しみに訪れた石巻市出身の写真家橋本照嵩さん(84)=さいたま市=は「私のデビューと開業がほぼ同時期だったと思う。私の写真集を店内に置き応援してくれた。寄るべき場所がまた一つ減った。寂しい」とそれぞれ語った。

 哲也さんは「たくさんの思い出がよぎる。何よりお客さんに恵まれた50年だった。街中に憩いの場所を継承してくれる人が現れたならうれしい」と話す。

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