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2023ニュース回顧 取材ノートから > 記録的猛暑 水揚げや農業、被害深刻

ラムネに手を伸ばす子どもたち。今夏はうだるような暑さが続いた=8月5日、石巻市

 2023年も残すところあと10日。4年目の新型コロナウイルス禍は5類に移行し、社会は「アフターコロナ」に踏み出した。石巻地方では100回目の「石巻川開き祭り」をはじめ、各地でイベントが復活。日常の一部が戻る一方、異常気象や東京電力福島第1原発の処理水放出などさまざまなことがあった。今年1年を記者の取材メモから振り返る。

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<温暖化、真に向き合う時>

 今年夏の取材は体力勝負だった。特に屋外、炎天下での取材は記者たちを大いに苦しめた。カメラは熱せられ、車の中はサウナのようだった。日傘やポータブルの扇風機などを手に歩く人も多かった。

 石巻は8月11日、30度以上の真夏日になった日数の年間最多記録を50年ぶりに更新した。暑さは9月中旬まで続き、記録は最終的に47日まで伸びた。それまでの最多は21日。開きは倍以上だ。凍える冬になっても、記憶から消し去るのが難しいほど暑かった。

 基幹産業の農漁業への影響は深刻だった。

 いしのまき農協が扱うホウレンソウや長ネギ、ブロッコリーなどほぼ全ての作物が高温の影響を受けた。トマトは実のなりが少なく、集荷量は例年の半分以下。コメはササニシキへの影響が大きく、例年集荷の9割近くを占める1等米の割合が7割に届かなかった。

 県漁協石巻湾支所では高水温で水揚げしたカキの4割近くが死滅。丹野芳広カキ部会長(59)は「昨季の半分以下の収量になるのではないか」と肩を落とす。近年は解禁日を迎えても身入りが少なく、2週間遅れで出荷を始めていた。今年は約1カ月も遅れた。

 気象庁気象研究所(茨城県つくば市)などの研究チームは今夏の異常気象が「およそ60年に1度の非常にまれ」な事象であったと発表した。

 研究は地球温暖化が大きく影響したことも示した。猛暑の発生確率は温暖化していない場合はほぼゼロなのに対し、温暖化の影響下で1.65%。われわれを苦しめたのは、人類の活動が招いたとも言えるのだ。

 石巻で南方系のタチウオが網にかかるようになったのも、温暖化の影響と見られる。海洋環境の影響は水産業が盛んな石巻地方の命運を左右する一大事。産業を守るために、温暖化は真剣に向き合うべき課題だ。

 気候変動や貧困など人類の課題を包括した指針である、国連の持続可能な開発目標。その略称「SDGs」は今年の「石巻かほく」の見出しに13回、本文には約50回登場した。石巻地方での環境保全などへの関心の高まりがうかがえる。

 この関心が一過性の現象にならないよう、われわれ記者も当事者意識を持って、環境保全や温暖化に絡む世の中の動きをきめ細かに報じていきたい。(西舘国絵)

■メモ
 気象庁によると、石巻地方の8月の平均気温は石巻が27.8度、女川が27.6度で、年間の月平均気温の最高を更新した。猛暑の影響で、県漁協石巻湾支所管内のカキの水揚げは出荷開始から約40日経過した時点で約4トンにとどまり、前年同期7トンを下回っている。

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