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住民避難を迅速に 県と7市町、「原子力防災訓練」実施 アプリ活用の効果、検証

スマホでQRコードを読み込み、避難所の受け付けを済ませる参加者=20日午前11時50分ごろ、栗原市瀬峰農村環境改善センター
避難車両のワイパー部分の放射線量を調べる検査員=20日午前10時25分ごろ、登米市登米総合体育館(写真の一部を加工しています)

 県と東北電力女川原発(女川町、石巻市)30キロ圏内の7市町は20日、本年度の原子力防災訓練を実施した。県が開発し昨年9月に運用が始まったスマートフォンの避難支援アプリを活用し、住民避難の手順や迅速化を検証した。

 国や警察、自衛隊など18機関の約370人と、避難訓練には住民163人が参加。三陸沖の地震で女川原発2号機が緊急停止し、冷却機能が失われて炉心が損傷。放射性物質が放出したとの想定で行った。

 参加した住民は自家用車やバス、ヘリコプターで避難。女川町は大沢、小乗など5地区の住民33人、石巻市は北上地区の24人が陸路での避難を試し、登米市登米総合体育館に設けられた避難退域時検査場所を経由して各避難所へ向かった。

 検査場所では、県と東北電の職員らが車両検査や検査済証の交付などに当たった。住民らが乗った車を2レーンに誘導。専用の機械で放射線量を調べた。アプリが使える人はQRコードをスマホで読み取り、画面に表示された避難先を目指した。

 女川町民33人がバスと車で避難した栗原市瀬峰農村環境改善センターでも、アプリを使った受け付け登録を検証。アプリでQRコードを読み込み、受け付けを済ませたのは約半数の16人だった。

 同町旭が丘のアルバイト阿部明夫さん(76)は「使い方を教えてもらいスムーズにできた。全体的な流れを確認できた」と話した。一方、アプリを使わなかった同町桜ケ丘の無職植木なを子さん(85)は「一つ操作を間違うと大変。メールは使うけど、アプリは難しいと感じる」と語った。

 避難所の避難者に必要な物資を聞くアプリのアンケート機能も初めて試行。生活用品や防災グッズなど25点から5点を選んでもらった。町民10人が回答し、缶詰を選ぶ人が多かった。

 県原子力安全対策課の横田浩志課長は「アプリの機能を確認できた。扱いに慣れていない高齢者もいるので、説明会などを町や市と協力して進めたい」と話した。能登半島地震を受けては「能登では道路の不通や海路が機能しない部分があった。国の検証を待ち、避難計画の見直しや改善をしていきたい」と述べた。

 昨年12月に避難計画などを集約した「女川地域の緊急時対応」が改定された。石巻市鮎川港では、船での避難で石巻港が使えない事態に備え、新たに移動先に加わった塩釜港への避難を実践した。東松島市では小野地区の住民18人が名取市へ避難した。

 東北電は5月ごろの再稼働を予定していたが、安全対策工事の完了と再稼働が数カ月遅れる見通しとなっている。

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