(805)冬帽を脱げば南に癖毛立つ/今井聖(1950年~)
はねた自分の毛はなかなか見えませんから、友人、知人の姿なのだと思います。冬帽だけでは毛糸の帽子か、紳士的な中折れ帽子か種類は分かりませんが、暖かくぴっちりとしたかぶり心地は想像できます。その帽子で押さえられ癖の付いた髪がぴょんと立ち、南を指しているのです。方角を意識するような開けた場所にいるのか、…
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- ・(804)マフラーを巻き寂しさを戒める/野名紅里(1998年~)
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- ・(800)薪(まき)をわるいもうと一人冬籠/正岡子規(1867~1902年)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。