(806)待春(たいしゅん)の日ざし溢(あふ)るる無縁墓地/鹿野佳子(1934年~)
晩冬、寒さ極まる時期だが、それゆえにいっそう日ざしの暖かさがありがたい。春はまだ来ていないのだが、心に小さな春が芽生えるのが「待春」なのかもしれない。「無縁墓地」は、継承する親族や縁故者がいなくなった墓地。人口が減少する中、増加が予想される。無縁の「縁」は親族関係の縁であろうが、仏教的な考えからす…
関連リンク
- ・(805)冬帽を脱げば南に癖毛立つ/今井聖(1950年~)
- ・(804)マフラーを巻き寂しさを戒める/野名紅里(1998年~)
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- ・(802)枯木ことごとく阿修羅となりて立つ/遠藤若狭男(1947~2018年)
- ・(801)白息を汽笛のやうに繰り返す/遠藤容代(1986年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。