ブルーインパルス搭乗記(2) フィッティング 救命装備品、入念に調整
【元航空機整備士・添田潤】
ブルーインパルスが日本全国の飛行展示に出る時、整備士が後席に搭乗し先方での整備作業に当たります。その際、搭乗するための各種装具を私の体に合わせなければなりません。アクロバット飛行に搭乗する際は、それ以上入念な調整が必要になります。救命装備専門の整備士である救命装備員が調整してくれます。
■骨格に合わせる
ヘルメットの大きさはMやLでだいたい決まっていますが、耳の当たり具合を調整するためいろいろな厚さのパットを入れて試します。耳の当たり具合は通信を聞き取るため重要です。当たりが弱いと周りの雑音が入り通信が聞き取りにくくなり、強いと飛行中頭が痛くなってしまいます。
その後、酸素マスクの調整に入ります。ヘルメットに金具でつながっており、締め付けを調整します。顔の形にぴったりフィットしていると思い、実際に空気を送り込むテストマスクを作動させると、顔の至る所から空気が漏れます。
救命装備員が各種パットをマスクの内側に詰めて私の顔に合わせてくれますが、なかなかうまくいきません。何度かマスクを外しパットの交換を行い、やっと調整が終わりました。「彫りの深い顔だと大変なんです。案外簡単に終わりました」と救命装備員。薄っぺらな顔なのかと微妙な気持ちになりました。
次にGスーツの調整に入ります。Gスーツは航空機の旋回中に遠心力によりG(重力)がかかった時、血液が下がって脳に行かなくなることを防止するため、腹部と下肢を締め上げて強制的に血液が下がらないようにするものです。カウボーイがズボンの上に履いているようなものの形で、通常飛行展示に出る時、後席の整備士は装着しません。
体形が一人一人違うので、Gスーツは完全なオーダーメード的調整になります。腹部、太もも、ふくらはぎに当たる部分はコルセットのように編み込みになっており、ひもを一本一本救命装備員が締め込んでくれます。救命装備整備員の指が切れるのではないかと心配しました。
■緊急脱出に備え
最後に機体のパラシュートと直結するベルトが付いたジャケットを着て調整します。万が一、緊急脱出してパラシュートで海に落ちたとき自動でパラシュートを切り離す機構や救命胴衣、緊急用無線機などが入っているため、ランドセルを背負う形で着用します。ランドセルでいうところの肩から脇の下にかかるベルトの左右をつなぐ胸索(きょうさく)、お尻から足の付け根を通る脚帯を調整します。
脚帯はパラシュートが開いた時の開傘衝撃を最も受けるため、念入りに調整します。脚帯を着けた状態で直立できるくらいでは緩く開傘衝撃に耐えられないそうです。昭和の頃はパラシュートを背負って飛行機に乗り込みましたが、ブルーインパルスの機体は座席にパラシュートが内蔵されています。緊急時には地上に止まっている状態でもロケットカタパルトなどで座席ごと打ち出され、パラシュートで安全に着地できます。
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